九島辰也連載 マツダCX80九島辰也連載 マツダCX80

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2024.5.31

日本未発表マツダCX-80 技術の進化がマツダをどう変貌させていくか




時代の変遷と共に、進化するマツダのラインナップ

 

マツダが変貌しようとしている、……ような気がする。コンパクトカー主体の彼らが大きなサイズのモデルを4月にヨーロッパで発表したからだ。CX-80と呼ばれる3列シートのSUVがソレ。これは彼らの“ラージ商品群”のひとつで、すでに第4弾となる。
“ラージ商品群”とは、その名の通り大きなモデルのラインナップのこと。CX-60に続きCX-90、CX-70が次々と海外で発表されている。CX-5のアニキたちにあたる感じだろうか。マツダにとって久しぶりの大きなクルマたちとなる。

 

マツダはかつて3ローターエンジンを搭載したユーノス・コスモのような上級車種もラインナップしていた。世はまさにバブル景気。大きくて豪華なクルマが好まれていた時代の産物だ。が、ここ数年コンパクトカーに特化している。ミニバンをやめてからしばらくはアテンザがマツダのハイエンドに位置していたくらいだ。
その理由を分析すると、フォードグループ傘下での活動期間が大きく関与した気がする。90年代後半から2000年代は、コンパクトカーをマツダ、ミッドサイズをフォード、ラージサイズをジャガーやランドローバーが担当していたのだ。その他にも、スーパーカーにはアストンマーティンがあったり、デザインや環境対策を全面に押し出してきたボルボがあったりした。リンカーンやマーキュリーといった米国内向けドメスティックブランドを加えれば、まさに一大帝国である。

 

で、こうした各ブランドの編成からボディサイズ同様パワーソースもブランドごとに分けられた。マツダは直4のようなコンパクトエンジン、フォードは6気筒中心の中排気量エンジン、ジャガー&ランドローバーはV8に代表される大排気量エンジンの開発・生産を担当することとなる。アストンマーティンの12気筒はフォードのV6ユニットを2つつないだものだ。それを証拠にどちらもエンジン工場はドイツのケルン近郊にある。
よってコンパクトエンジンを任されたマツダはそのエンジンに見合ったクルマつくりが続いていきた。小さなサイズのクルマばかりになったのはそういう理由だ。






マツダが得意とする、高効率のコンパクトエンジン

 

だが、時代が移り変わり思わぬ機会を得た。得意中の得意である小排気量エンジンをターボ化し、さらにモーターを組み込むことで内燃機関だけではかなわなかったパフォーマンスが引き出せるようになったのだ。マイルドハイブリッドもそうだし、プラグインハイブリッドのようにしっかり電池を積めばかなりの馬力を見込める。
新型メルセデス・ベンツEクラスはその手法で、2リッター以上の排気量を持たない。2リッター直4ターボのガソリンエンジン+モーターのハイブリッドと同排気量の4気筒ターボのガソリンとディーゼルエンジンのマイルドハイブリッドで構成される。あのEクラスでさえそうなのだ。





新型CX-80のボディサイズは、全長4,995mm、全幅1,890mmで、全高1,710mm(欧州仕様)。 新型CX-80のボディサイズは、全長4,995mm、全幅1,890mmで、全高1,710mm(欧州仕様)。

新型CX-80のボディサイズは、全長4,995mm、全幅1,890mmで、全高1,710mm(ルーフレールを含む)。
*欧州仕様








マツダが欧州市場に初めて導入する3列シートSUV。 マツダが欧州市場に初めて導入する3列シートSUV。

マツダが欧州市場に初めて導入する3列シートSUV。








ということで、モーターという新たな武器を手に入れたマツダは高効率のコンパクトエンジンをさらに上手に使いこなすことができるようになった。電動モーターが自動車業界で市民権を得れば得るだけ、4気筒エンジン、もしくは3気筒や2気筒エンジンの可能性が現れるというわけだ。ちなみに、冒頭に記したラージ商品群のCX-80のパワーソースは2.5リッタ―直4ベースのプラグインハイブリッドと3.3リッター直6ディーゼルベースのマイルドハイブリッドとなる。“ラージ”と言っても大排気量V8エンジンは存在しない。

 

またマツダはMX-30 R-EVに搭載されいる発電用ロータリーエンジンや次世代パワーソースの注目株となる液体水素を燃料とするエンジンにも着手している。その点からも彼らの内燃機関に対するこだわりの強さを感じられる。しかも、そのことの重大さは我が国もそうだし、世界中の各メーカーが理解し、評価しているのだ。
なんて感じにパワーソースが決まってきて、さらに高いパフォーマンスを発揮できるようになると、もうひとつのマツダの真骨頂“デザイン”に関して進化を遂げなくてはならなくなる。








期待が集まる、マツダデザインの未来

 

昨今のデザイントレンドはレトロモダンだが、前回のモビリティショーで話題をさらったアイコニックSPはそれを見事に表現した気がする。ターンテーブルの上にスポットライトが当たると、多くのクルマ好きの目を釘付けにした。実際はSUVを買うマーケットが大きくても、こうしたスポーツカー的デザインスタディは必要だ。SUVが何台並んでもかっこいいスポーツカーが一台あれば、最大限の注目を得られる。なので、こうしたデザインスタディを昔のようにコンスタントに発表した方がいいと思う。最近は少々ご無沙汰だけに期待は膨らむ。

 

と言いながらも、最近個人的に興味を持っているのはインテリアだったりもする。デジタルプラットフォームの進化で、ダッシュボード周りの仕立てが自由になったからだ。よってメルセデスのように全体をディスプレイ化してしまうこともできれば、新型MINIのように大きな丸型センターディスプレイとヘッドアップディスプレイにまとめることもできる。なんとメータークラスターなし。これはこれでスッキリしていて気持ちがいい。

 











欧州では今年5月に予約受注を開始し、今秋には発売予定。日本導入はまだ明かされていない。 欧州では今年5月に予約受注を開始し、今秋には発売予定。日本導入はまだ明かされていない。

欧州では今年5月に予約受注を開始し、今秋には発売予定。日本導入時期はまだ発表されていない。






3列目を畳むと、多くの荷物が積めるゆったりスペース。 3列目を畳むと、多くの荷物が積めるゆったりスペース。

3列目を畳むと、多くの荷物が積めるゆったりスペース。






 

ということでマツダの変貌の足音が聞こえている。小さい排気量エンジンに電動モーターを取り付けた高出力パワーソースと、ラージサイズのボディだ。アイコンになるデザインを期待したい。個人的にはユーノス・コスモのオマージュかな。大人が欲しがるラグジュアリースポーツクーペ。しかもかなりのロングノーズ。いずれにせよ、これまで培ってきた彼らの経験を活かす時代が近づいている気がする。

 

Photo by MAZDA












九島辰也 Tatsuya Kushima

 

モータージャーナリスト兼コラムニスト。現在、サーフィン専門誌「NALU」のメディアサイト編集長、メディアビジネスプロデューサーを担当。これまで多くのメンズ誌、ゴルフ誌、自動車誌、エアライン機内誌などの編集長を経験している。メディア活動以外では2023-2024日本カーオブザイヤー選考委員、(社)日本葉巻協会会員、日本ボートオブザイヤー選考委員、メンズゴルフウェア「The Duke`s Golf」のクリエイティブディレクターを務めている。

 

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