東京の食の現在地を世界に示す
1月19日(月)から2月17日(火)までのおよそ1カ月にわたって、「東京最高の名物料理レストランウィーク2026」が開催される。
同イベントは、今回で25冊目となるレストランガイド本『東京最高のレストラン』(ぴあ刊)が主催するものだ。
東京の117軒の人気レストランが名物料理とともに参加し、世界一の美食都市の魅力を堪能できるまたとない機会となっている。
イベントの今回のテーマは、「過去・現在・未来を紡ぐ名物料理」である。
シリーズ25冊目となる『東京最高のレストラン』(ぴあ刊)。
「飲食業界に長く関わってきて、この業界に恩返しがしたいという強い思いが何よりも先にありました」
2001年の創刊時から編集長を務めてきた大木淳夫氏はそう話す。
氏が同イベントを開催したいと思った理由は他にもある。
「ニューヨークやパリなど、世界の多くの都市にレストランウィークがあります。東京は世界のどの都市よりも食が豊かなのに、なぜそれがないのだろうという疑問がありました。
25年間にわたって名店を紹介してきた『東京最高のレストラン』には、その役割を担って、東京の食の現在地と可能性を世界に示すという使命が課せられているのではないかと考えたわけです」
『東京最高のレストラン』の大木淳夫編集長。
「江戸から未来へ」味をつなぐ
昨年の第1回目は、「東京の名物料理を食べに行く」というコンセプトで、100店を超える有名レストランが参加した。
「今年は少し増えて、117軒の参加が予定されています。また、同イベントが東京都の『東京の魅力発信プロジェクト』に採択されたことから、東京の現在を代表する美食を伝えることはもちろんですが、江戸から続く400年以上の食の歴史にも光を当てることになりました」(大木氏)
実際、同イベントのホームページに飛ぶと、イタリアン・フレンチ・中華・和食・鮨・肉料理・焼鳥・その他などのジャンルから店を予約できるが、興味深いのは「特別企画から選ぶ」のコーナーだ。
・江戸・明治の味が楽しめる料理コース
・未来の名物料理体験コース
・体験型コース(握り体験・まかない体験等)
・今では味わえない名物料理復刻コース
・目指せ!一流シェフ 若手料理人応援コース
・レストランウィーク特別コース
興味深いコースが並んでいる。
「後援してくれた東京都によりますと、そもそも『江戸』というワード自体が、世界的にはまだまだ知られていません。そこで、『江戸から未来へ』と大きな括りを設けまして、コンセプトも内容も昨年と比べて格段に明確にしました。このイベント期間のために多くのレストランが特別メニューを作ってくれます」(同前)
今回、店の予約はTableCheck(テーブルチェック)を経由することになる。英語版のメニューもすべて作っているので、外国人の予約も簡単だ。
「鮨 からく」の特別メニュー
特別メニュー「江戸時代の握り寿司」を考案した名店「鮨 からく」の戸川基成親方に話を聞いた。
店は銀座のほぼ中心にあるが、入口には、「江戸前寿司研究所」なる表札が掛けられている。親方は江戸前寿司を知悉することはもちろん、英国のソムリエ資格を有し、ワインとのペアリングでは世界的に知られた料理人だ。
「この話を大木さんから頂戴した時に、江戸というコンセプトを伺って、それならば江戸の寿司を再現してみようということになったのです」
お武家たちが食べている高嶺の花であった寿司を、「庶民も食いてえ」と言って出来たのが屋台で食べる江戸前寿司である。
銀座の「鮨 からく」は江戸時代の握りを再現させた。手前の現代の握りと比較すると、その大きさが判る。
「通常は1貫の寿司のシャリは15グラムですが、江戸時代にはおよそ3倍の1貫50グラムもあったようです」
トップ画像が再現された寿司なのだが、確かに小型のお握りのようだ。シャリが多い分だけ、酢飯の重要度が増すはずだ。
「酢飯が美味しくないといけません。江戸時代に寿司に使っていたのは赤酢です。精製していない酢ですから旨味が強い。ウチのシャリは見た目は白いのですが、実は赤酢なんです。特別にもらっております赤酢の上積みだけを使うと、白いシャリになります」
酢がキリリと立っていて、細工を施したそれぞれの江戸前のネタと見事に合致している。1貫は大きいので一口で食べるのは難しく、半分ずつが丁度よい。
では、ネタはどうなるのか。
「江戸時代は、基本的に東京湾で獲れたネタしか使いませんでした。屋台で外気にさらされ、おまけに冷蔵庫がないので生ものは使えません。
鮪は腹から腐っていきますから、トロは捨てていました。赤身はヅケにして臭みを取った。玉子は稀少ですから、玉子焼きがいちばん高価だったようです。
酢で締めた青魚、昆布で締めた白身、煮た穴子や蛤、ヅケなどがメインとなってきます」
寿司に最も合うワインは?
当店のスペシャリティでもあるペアリングだが、それを支えるのは膨大な数のワインを試してきた20年間の歴史である。
「一つずつ寿司を出すときにワインをペアリングして、大体6種類から8種類ぐらいを少しずつお出ししています。8割はワインですが、必ず日本酒も入れています。ワインは白も赤もお出ししますが、実はウチの江戸前寿司にいちばん合うのはロゼワインなのです。
なぜかと言うと、ロゼには白の要素と赤の要素がありますから、幅が広いんですね。フランス人がペアリングの際にロゼをたくさん飲むのは、あまり悩まなくて済むからです。
レストランウィークの特別メニューにお出しするのはオーストラリアのシラーズで作った『スモール・フォレスト』を考えています。これはお醤油との相性が非常にいいのです」
確かに、ロゼは白身にも鮪にも見事に合った。他にも、鮪のヅケに合わせて試飲させてくれたブルゴーニュの赤「ボーヌ・デュ・シャトー」は、ちょっと凄いマリアージュとなって現れた。
親方が到達したペアリングは別格の感がした。「鮨 からく」を訪れた際には、その絶妙さをぜひとも味わっていただきたい。
八重洲の「8go」の一品である月齢100カ月の経産和牛のグリルは実に深い味わいだ。
多彩な特別メニューの品々
他店の特別メニューの一部を紹介すると、「江戸・明治の味が楽しめるコース」では、「浅草ひら山」の「花巻蕎麦」、「御料理ほりうち」の「ねぎま小鍋」、「四川料理 巴蜀」の「江戸時代(西暦1862年)の麻婆豆腐入り特別コース」、「乃木坂しん」の「雉の雑煮」などが、特別メニューとして提供される。
「未来の名物料理体験コース」からは、「Siamo noi」の「未利用魚と野草の乳酸発酵ソース」、「Filemone」の「ビーガンティラミス」などが提供される予定だ。
1月14日にプレス発表会が八重洲のレストラン「8go(エゴ)」で開かれたので、その模様を報告しておきたい。
料理の試食は「江戸時代」「未来」の名物料理が提供された。「未来の名物料理」は「8go(エゴ)」より「8年後の未来の名物料理」から7品が出された。特に印象深かったのは、「サスティナブル和牛」で、およそ月齢100カ月の経産和牛を用いたグリルだ。実に柔らかく味わいがグッと深い。丁寧に育てられたことが判るような見事な肉だった。
「江戸時代の料理」は、「江戸前 芝浜」と「奈美路や」より7品が出された。「江戸前 芝浜」料理長の海原大氏は江戸料理に精通している。ちなみに彼がレストランウィークで提供する「江戸御菜番付コース」は、江戸時代に庶民の間で人気のあった‶おかず″を相撲の番付に見立ててランキングした「江戸御菜番付」から着想を得た特別コースだ。
印象深かったのは「ねぎま鍋」(通常メニューでの提供で今回の特別コースには入っていない)で、出汁はカツオだけなのに、具材であるマグロと葱から引き出された旨味が素晴らしかった。
この2店舗を体験しただけでも、心が打ち震えた。是非ともこの好機を逃さず、数多くの名店を訪ねてみたいものだ。
Toshizumi Ishibashi
「クレア」「クレア・トラベラー」元編集長
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