健康へのこだわりや信仰上の理由、また信条などで、食べることに対して制限をもうけている人たちが増加している。バリアフリーレストランとは、食に対するこだわりをバリアととらえるのではなく、おいしく楽しむことを提案するレストランだ。食は、ライフスタイルの多様化やグローバル化など「今」を映すもの。オーガニック、ハラルフード、低糖質&低カロリー、ベジタリアンの4つのカテゴリーから3店ずつピックアップ。東京のバリアフリーなレストランを紹介していく。
2007年に池尻大橋の閑静な住宅街にオープンし、今年で12年目を迎えるフレンチレストラン「OGINO」。産地直送の無農薬野菜をふんだんに使い、パテなどのシャルキュトリやジビエ料理も美味。しかも一皿一皿にボリュームがあり、コストパフォーマンスもいい。30席ほどの居心地のいい店内でワインとともに安全でおいしい料理が気軽に楽しめるという、ゲストにとっていいことづくめのレストランだ。
現在、食材のほとんどは農家から直接仕入れる無農薬野菜、産地が明確で安全な肉や魚、そして狩猟仲間から仕入れたジビエだ。荻野伸也シェフが生産者に興味を持ったきっかけは、北海道で大量の規格外野菜が廃棄されたり、シカが害獣として処分されたりしていることを知ったこと。それ以来、食材を捨てることなく使い、すべての命を無駄にしないという取り組みを始めた。もともとジビエ料理が得意な荻野シェフだが、今年、狩猟免許も取得し、山に狩猟に出かけていく予定だ。自身で狩りを行い、獲物を捌き、料理としてレストランや惣菜店で売り切る。命ある物を頂くのだから、川上から川下まで責任を持って、無駄なくおいしく食べられるようにするのが料理人の責任だという。
この日のメニューの野菜をふんだんに使ったサーモンのサラダも、生き生きとした野菜がどれも個性豊かで、香りと旨みが濃い。ダイナミックにカットしたイノシシ肉にアーモンドをまぶし、こんがりと焼いたイノシシのローストはシェフ自慢の逸品。濃厚な赤ワインソースがワインを進ませる。
砕いたナッツをまぶしたイノシシのロースト。ソースは骨のエキスと赤ワインを煮詰めて作る。
廃棄される運命の規格外野菜に、フランスの料理の技術によって付加価値を付け、生産者を支援し、環境保護に貢献するのが使命だと語る。
無農薬野菜などの安全な素材を使えば、消費者はよろこび、農業による環境負荷も少ない。そして何よりも一般的な流通の枠から自ら出て頑張っている生産者に、賛同することにもなる。安心して食べられる“美味しいもの”を提供するのはシェフの仕事だが、安全だけを追求してもレストランとしては成り立たちにくい。まず美味しいものがあり、それが結果的に安心安全であることが理想だと話す。生産者と消費者、食材を育む環境に対して持続的に貢献し、バランスよく繋げるのが料理人の仕事だとも語る。食材の食べごろは生産者が一番よく知っているため、週に1度届く食材のセレクトは生産者に任せて、箱を開けてからメニューを考える。その日届いた食材を前にゲストを満足させるメニューを考えるのは、料理人として、とてもエキサイティングでクリエイティブな瞬間だ。
ソムリエセレクトのグラスワインは、フランス産を中心に数種類用意されていて、気軽にワインを楽しむことができる。
店内のインテリアはシンプル。フランス料理からイメージする敷居の高さはない。
何でも自分で知りたい性格と自己分析する荻野シェフ。サーファーであり、アスリートであり、オーナーシェフでもあり、楽しみながら全てをこなす。「すべてを自分でやって納得したいんです。」その姿勢が、素材をすべて無駄なく使おうという食品ロスの解消につながり、ジビエ料理の普及につながる。レストランから発信できることはたくさんある。それを荻野シェフは、自ら実践しているのだ。
(敬称略)
OGINO ORGANIC RESTAURANT
東京都世田谷区池尻2-20-9 SPAZIO R-655 1F
11:30~15:00(12:45L.O.)(土・日曜・祝日のみ)
18:00~23:00(20:45 L.O.)
ランチ2,990円(サービス料込み・税別)
ディナー5,800円(サービス料込み・税別)
https://french-ogino.com/
Text by Yuka Kumano
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