みんな大好きハンバーグの巻である。今回紹介するのは洋食の名店「たいめいけん」だ。
オムライスの巻と同様に、筆者がガッカリする種類のハンバーグについて触れておきたい。まず、中が生焼けでユッケみたいになっているやつ。別にここで半生肉を食べたくもないんだよね~。客にフィニッシュを委ねるんじゃなくて、最後までちゃんと調理して欲しいわ。二番目は上に大量のチーズを載せるやつ。チーズの味が肉の味を殺すと私は思う。というか、それで安い肉の味を誤魔化してんの?と疑ってしまう。三番目はシチューがたんまりとかかっているやつ。これも大方は好みじゃない。
要は、デミグラスソースが一番いいってことです。目玉焼きが載っているのはもちろん、むしろ大歓迎っす。ということで、ハンバーグを食べるなら、東京・たいめいけんを推したい。
ゴリゴリの実力派「たいめいけん」
そのハンバーグには一口で悶絶する!
さて、あの有名な「たいめいけん」のハンバーグを語ろう。商売熱心で、真っ黒けに日焼けした茂出木シェフで知られる。チャラい店なんじゃないかと思う筋もあろうかと思う(笑)。しかし、一度でも行ったことのある人は、あれは単なる商売上の不思議なパフォーマンスであって(笑)、ゴリゴリの実力派の店であることを知っている。
1Fは大衆洋食屋、2Fは格式がちょっと高いダイニングで、茂出木氏の姿を見たければ2Fに行かねばならない。
大体、何を食べても間違いがない。誰もが最初に頼む「コールスロー」からして尋常な旨さではない。長方形に切ったキャベツの甘みとドレッシングの酸味がいい感じだ。ちなみに、小さなカップに入った「ボルシチスープ ウクライナ風」は旨味がいま一つ足りない気がした。物足りないのは、この品くらいであろう。
おやおや?ハンバーグにナイフを入れても肉汁は出ないのに、お口の中でジュワ~ジュワ~と肉汁の波状攻撃だ。たまらぬ。
コールスローすら旨い。キャベツの甘みとドレッシングの酸味のバランスが良き。
この店の「ハンバーグステーキ」は2階で食べたら3800円と、とても高い(1Fなら2800円)。しかし、高いのにはワケがあって、特選国産牛ヒレ肉を100%使用しているからだ。つまり、和牛ヒレのステーキを食べているのと同じ。こんなに高いのに、マズけりゃ誰だって怒るよね?
大丈夫。値段だけのことはある。
肉は途轍もなくしっとり。ナイフを入れると、肉汁はそんなでもないのに、口に入れたら、ジュワ~の連続ですわ。そしてとても柔らかい。まさに特選国産牛ヒレ肉の旨味が溢れんばかり。一口食べただけで、尋常ならざる旨さに驚く。ウマッと口走ったよ、あたしゃ。高級な牛肉を食っていることに、口はもちろん総身が喜ぶ。相当に旨い。そして、濃厚なデミグラスソースがいい。肉の旨味が赤ワインで煮詰めてある~って感じで、しかもトリュフの風味を加えた贅沢なもの。おかげでソースがより一層の深みを増している。
付け合わせは、カリカリベーコンに、焼いたジャガイモ、オクラ、スッキーニなんだが、これはごく普通。これだけ旨いハンバーグの脇役としてはいま一つだ。甘く茹でた野菜をバターでソテーしたやつの方が合うんじゃないかね。しかし、そんなことは眼中になくなるくらい、ハンバーグにむしゃぶりついてしまう。いやー、完全に脱帽。またすぐにでも食べたい!
ほかに、カニクリームコロッケもマカロニグラタンもスパゲッティナポリタンもオムライスも、東京の洋食屋ではトップクラスに旨い。真面目に、真面目に、食に取り組んでいる店なのだ。だから、そのうち「特選フィレ肉ステーキ」(10,000円~/200g~)も食べてみたい気になる。
しかも、年季の入ったサービスも素晴らしいのだ。例えば、スパゲッティナポリ風は海老もしくは蟹でメニュー上にあるのだが、「海老と蟹ではなくて、ハムでもできますか?」と聞けば、それに快く応じてくれる。スターシェフの茂出木氏は、客の帰り際に写真撮影にも応じている。この店にアナを探すのはなかなか難しいほど、至れり尽くせりなのである。
たいめいけん
東京都中央区日本橋室町1-8-6
03-3271-2463
ハンバーグステーキ(目玉焼きのせ) 3,800円
コールスロー 900円
ボルシチスープ ウクライナ風 1,100円
スパゲッティナポリ風(海老) 2,900円
蟹クリームコロッケ 3,500円
(1Fと2Fでは値段が異なる。これは2Fの値段)
営業時間:【1F】11:00~21:00、(日・祝)11:00~20:00 【2F】11:30~1500、17:00~21:00
定休日:【1F】月曜日【2F】日曜日・月曜日
※各店の営業日/時間、値段は変わることがあるので要確認されたし。
「これを食べなきゃ人生ソンだよ」とは
うまものがあると聞けば西へ東へ駆けつけ食べまくる、令和のブリア・サバランか、はたまた古川ロッパの再来かと一部で噂される食べ歩き歴40年超の食い道楽な編集者・バッシーの抱腹絶倒のグルメエッセイ。
筆者プロフィール
食べ歩き歴40年超の食い道楽者・バッシー。日本国内はもちろんのこと、香港には自腹で定期的に中華を食べに行き、旨いもんのために、台湾、シンガポール、バンコク、ソウルにも出かける。某旅行誌編集長時代には、世界中、特にヨーロッパのミシュラン★付き店や、後のWorld Best50店を数多く訪ねる。「天香楼」(香港)の「蟹みそ餡かけ麺」を、食を愛するあらゆる人に食べさせたい。というか、この店の中華料理が世界一好き。別の洋物ベスト1を挙げれば、World Best50で1位になったことがあるスペイン・ジローナの「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」。あ~、もう一度行ってみたいモンじゃのお。
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