健康へのこだわりや信仰上の理由、また信条などで、食べることに対して制限をもうけている人たちが増加している。バリアフリーレストランとは、食に対するこだわりをバリアととらえるのではなく、おいしく楽しむことを提案するレストランだ。食は、ライフスタイルの多様化やグローバル化など「今」を映すもの。オーガニック、ハラルフード、低糖質&低カロリー、ベジタリアンの4つのカテゴリーから3店ずつピックアップ。東京のバリアフリーなレストランを紹介していく。
御徒町から歩くこと10分ほど、下町情緒を残す商店街の一角に店を構える「味農家」は、今年で11年目を迎える和食店。カウンター7席とテーブル1卓のこぢんまりとした店を店主の河原潤治が一人で切り盛りする。メニューは「味農家コース(6,000円)」と「ベジタリアンコース(6,000円)」の2種類のみ。「味農家コース」の1品以外は、ほぼ野菜のみの会席料理だ。
前菜から始まり、椀、魚菜、揚物、蒸物、煮物、食事、甘味という基本に忠実な会席料理は、その一つ一つに創意工夫が施され、最後の甘味に至るまで一切の手抜きなし。もともと野菜中心の会席のコース一本で始めたのだが、ベジタリアンの問い合わせが多く、ベジタリアン向けの料理にもチャレンジすることにした。内容は魚菜の一皿を野菜料理に変更する以外はほぼ同じだ。
ベジタリアンコースは「魚菜」の代わりに油揚げ、キノコなどの有馬山椒焼きに。
柔らかく蒸しあげられたカブにだし醤油のとろみ餡が絡む「蒸物」。
ただ和食の真骨頂とも言うべきだしは、北海道産の真昆布、鹿児島・枕崎産の鰹節、香川・伊吹島産の煮干しでとるため動物性の素材も使う。ベジタリアンコースは、真昆布と野菜だけでとるのだが、半年間かけてやっと遜色のない味わいに辿り着いた。「自分自身は何でも食べるし、お酒も飲む。だからこそ、おいしく食べて健康でいられることの大切さが身に染みる。通常の食生活に野菜中心のメニューを取り入れるだけで、身体が軽くなる。それをぜひ体験してほしい」と河原は語る。実際、リピーターにはおいしいものに目がないグルマンたちが多い。
一度出したメニューは二度と登場させず、10年以上も新しいメニューを作り続けているというのも驚きだが、「野菜のポテンシャルはすごいですよ。味も香りや食感も多種多様で、それをバランスよく組み合わせることで料理は無限に広がる。そのメニューを考えるのも楽しみのひとつ」とうれしそうに話してくれた。
例えば、この日の「蒸物」は、薄味をつけたカブをくり抜き、下ごしらえした厚揚げ、ピーマン、シイタケを詰める。その上に、豆乳で作ったチーズをのせてコクを出し、さらにだし醤油のとろみ餡を掛ける。何とも手の込んだ料理だ。柔らかく蒸し上げられたトロトロのカブにさまざまな食感や味わいが絡み合い、抜群においしい。それでいてなんともホッとするやさしさがあるのだ。
店主の河原潤治は「谷中魚善」で修業して日本料理の腕を磨いた。
台東区鳥越の商店街に店を構えて11年。素朴な看板に親しみやすさを感じる。
決して好立地と言えない場所で、人々に愛され続けている味農家。より自然で、体にやさしい食を求める時代の波に乗って、これからさらに人気が高まりそうだ。
(敬称略)
味農家
東京都台東区鳥越1-5-5
03-3866-3795
11:30~13:30(13:00 L.O.)・17:30~22:30(21:00 L.O.)
※ランチは月・火・木・金曜のみの営業
日曜・祝日・月末2日間
ランチ 1,000円(税込)
ディナー 7,000円~(税込)
https://www.minoyavege.com/
Text by Yuka Kumano
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