2019年9月、新しい時を刻み始める「The Okura Tokyo」。新しいオークラは「オークラ ヘリテージウイング」と「オークラ プレステージタワー」の2棟からなり、オークラの真髄や伝統は継承されつつ、さらなる進化を遂げるという。オークラの魅力を再確認し、新しいThe Okura Tokyoの姿に迫る12のストーリー。
伝統と革新をどう形にするか−−オークラの答えの一つが見えてきた。
長年親しまれてきたフランス料理の「ラ・ベル・エポック」は、「ヌーヴェル・エポック」として、生まれ変わる。「ヌーヴェル・エポック」とは、フランス語で「新しい時代」のこと。その名のとおり、オークラの新時代を象徴する料理、サービス、空間が楽しめるダイニングだ。
料理長には髙橋哲治郎が就任して、日本とフランスの食の融合をテーマに、料理を展開する。新しいレストランを考えるにあたって、髙橋料理長がまず着目したのは日本のテロワールだった。石川県能登ではThe Okura Tokyo専用の野菜の生産者と契約。能登のミネラルが多い土壌で育つ野菜は、フランスに引けを取らない旨味と存在感があるという。生産者の丁寧な農作業で育つ野菜には生命力が満ちている。その力を使って、フランス料理の新たな可能性を引き出していくという。ヌーヴェル・エポックは、日本各地の土地の個性、特性をフランス料理で表現するレストランであり、日本の食材のアンバサダーになろうとしている。
ヌーヴェル・エポックの料理長に就任した髙橋哲治郎。
「料理は、ヘルシー・アンド・ガストロノミーを心がけています。ヘルシーというのは、特に大切にしたいキーワードの一つです。日本ならではの発酵文化も取り入れていこうと考えています。同時に大切にしたいのは、今までのオークラフレンチが培ってきた味の蓄積です。フォンドボーやジュなどの根底は変えません。一方で、肉に魚介を合わせたり、相乗効果によって生まれるうまみなど、今までにない組み合わせを登場させます」と髙橋料理長。
トップ写真の「フォアグラのローズ仕立て ピエール・ドゥ・ロンサール」は、フォアグラのムースリーヌをバラの花にかたどった前菜だ。フレッシュフォアグラとコニャックなどで風味をつけ、クラシックでありながら思いがけないほど軽い口溶けは、フォアグラの印象を一変させる。ピエール・ドゥ・ロンサールとはフランス・ルネサンス期の詩人。バラの花と若さの儚さを歌って名を残し、バラの名前にもなっている。その名前を料理につけるところに、髙橋料理長の料理の方向性を垣間見る思いがする。
ヌーヴェル・エポックでは、今やフランスでも珍しくなったゲリドンを用いてのプレゼンテーションを行う。ゲリドンとはワゴンの上で肉を切り分けたり、フランベをしたりとサービスの技を見せるものだが、調理前の食材を美しくプレゼンテーションするなど、オークラらしい日本スタイルのゲリドンを披露するという。
什器はフランス・リモージュ地方のサフラン社の皿と、これもフランスのピュイフォルカ社のカトラリー。ステーキナイフはヌーヴェル・エポックのためにカスタマイズされた藤次郎の「脇差」というシリーズ。伝統を今に生かすモダンなテーブルを演出する。建築家の谷口吉生によって、内装も一新される。アール・ヌーヴォー時代を思わせた内装から、日本の空間構成を意識してナチュラルでモダン、開放的な雰囲気に。客席からは敷地の北側に広がる庭園が望むことができるオープンな造りになり、明るい新時代を感じさせる。「おいしかった、そして楽しかったと言っていただけるフランス料理をお出ししたいと思います」と言う髙橋料理長。ヌーヴェル・エポックがThe Okura Tokyoの一つの顔として、新しいイメージを作っていくのは間違いない。
Photography by Mutsumi Tabuchi
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