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オークライズムを紐解く12の扉

2019.9.12

11. オークラの新たなおもてなし。日本料理「山里」と茶室「聴松庵」

2019年9月、新しい時を刻み始める「The Okura Tokyo」。新しいオークラは「オークラ ヘリテージウイング」と「オークラ プレステージタワー」の2棟からなり、オークラの真髄や伝統は継承されつつ、さらなる進化を遂げるという。オークラの魅力を再確認し、新しいThe Okura Tokyoの姿に迫る12のストーリー。

寿司と割烹のカウンターを新設した日本料理「山里」。
そして、「茶室」が伝統を未来に伝えていく

1962年の開業以来、ホテルオークラ東京の「ホテルの和食堂」を標榜してきた日本料理「山里」。ホテルの中の食事処として、顧客のどんな注文にも応えようという姿勢が「食堂」という言葉に込められている。会席膳やコース料理など決まった組み合わせの料理だけではなく、旬の一品料理に力を入れていて、その数は60種類を超えるという。

新メニューの「ひれステーキすきやき風」。 新メニューの「ひれステーキすきやき風」。

新メニューの「ひれステーキすきやき風」。

新しい山里では、何が変わるのか。料飲部部長の杢代潔(もくだいきよし)に聞いた。「寿司と割烹のカウンターを新設します。寿司はThe Okura Tokyoの料理人が握ります。従来からの天ぷらカウンターもありますので、山里の中には三つのカウンターができることになります」。天ぷらや寿司を含めたどんな要望にも答え、「ホテルの和食堂」であることをさらに推し進めていくというポリシーだ。この構えで、和食の最高峰を目指すという。中でも象徴的なのが、計画当初からやりたかったという割烹のカウンターだ。割烹とは、文字通りカウンターで「切る(割)、煮る(烹)」料理のスタイル。ロの字型のカウンターの中に料理人がいて、客がそれを取り囲む形になる。「板前がお客様のお好みをうかがって、その場で料理します。お客様との会話が弾むようにしたいですね」。材料をどのように料理するかは板前と客とで決める。板前には、客が食べたい料理は何かを探り、それを実現するという高いレベルの料理技術と判断能力が求められる。日本の食文化を発信する仕組みとして、期待される存在になりそうだ。


本館にあった頃の「聴松庵」。 本館にあった頃の「聴松庵」。

本館にあった頃の「聴松庵」。

山里の一角には茶室がある。以前本館にあった茶室「聴松庵」が移築され、落ち着いた雰囲気を醸し出すはずだ。茶室は、和食の源流に思いをはせる装置でもあり、和食の価値を感じさせる。通常は山里の個室として使われることを想定している。「日本料理のサービススタッフは7人の女性ですが、皆お茶を習っています。海外からの方への説明を英語でできるようにスキルアップもしています」サービススタッフの意識も高い。「料理人もサービスもプライドを持っています。和食の文化のすばらしさを発信したいですね」(茶室「聴松庵」は10月1日より営業)

The Okura Tokyoの山里の個室イメージ。 The Okura Tokyoの山里の個室イメージ。

The Okura Tokyoの山里の個室イメージ。

新しい山里の設計は、「オークラ ヘリテージウイング」と「オークラ プレステージタワー」2棟のロビーと同じ、建築家の谷口吉生。ヘリテージウイングの4階に位置し、大きな開口部の外には庭が見える。5室ある個室のうち4室からは、部屋ごとに違う石組みのある日本庭園を眺めることができる。専用の車寄せと個室専用の入り口も設置されて、賓客を迎えるのにふさわしい日本料理の店となっている。

 

(敬称略)

Text by Akiko Ishizuka
Photography by © The Okura Tokyo

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