「美味しいジュースを見つけたので」と細川亜衣が教えてくれたのが、今回の『柑橘かん(かんきつかん)』のレシピである。
熊本県玉名市に天水(てんすい)という町がある。有明海に面したこの町は、古くからみかんの栽培が盛んで、現在でも熊本県有数のみかんの産地として知られている。
ジュースに使われている三種の柑橘。
その天水町に、障害者や高齢者、保育園などを運営する社会福祉法人『天水福祉事業会』があり、障害者とともに栽培する果樹園も運営している。ここでは主には雑柑(ざっかん)と呼ばれる柑橘果実を栽培。雑柑とは、夏みかんや八朔(はっさく)などのような、柑橘類の中でも由来が不明な果実のことを言う。
スーパーマーケットなどで目にすることが少ない果実などもあるが、その美味しさを多くの人に知って欲しいとジュース作りを始めた。細川が美味しいジュースと話していたのは、まさにこのジュースのことである。
「普段、果物はそのまま食べるばかりで、ジュースはほとんど飲まないのですが、これはまず外側のパッケージに惹かれ、紙をはがせば中のラベルに惹かれ、そして飲んでみたらその喉越しのよさと香りのよさにすっかり惚れ込んでしまいました」と細川は語る。
シンプルで温かみのあるラベルに手作り感が溢れている。
ジュースの味は3種ある。
『はみかんジュース』は、鏡餅の上に飾る小さな葉みかんを絞ったもので、濃厚な甘みが特徴ではあるが、種が多く食べにくいことから最近はほぼ流通していない。これをひとつひとつ手むきすることで、果実の味わいを存分に味わえる。
『ミックスジュース』は、毎年果実が変わっている。今年は温州みかんとスイートスプリングである。
そして今回、細川が柑橘かんに使用したのは『ポメロジュース』である。ポメロとは聞き慣れない果実だが、スペイン語でグレープフルーツを指す。正式な品種は「弓削瓢柑(ゆげひょうかん)」という。味はグレープフルーツより柔らかく、ほんのりとした酸味と甘みが特徴。サッパリとした飲み口だ。どれも丁寧に、そして愛情を込めて育てられた果実を使っている。
太陽の恵みいっぱいに育った果実の美味しさを堪能する
ジュースをそのままいただくのももちろん良いが、ひと手間を加えて柑橘かんにしてはどうだろうか。そしてこの寒天を寒風に1週間ほど晒せば「琥珀糖」になる。
1週間、寒風に晒した柑橘かん。結晶化しているのがわかる。
琥珀糖は、その透明感やほんのりと色づいた輝きから食べられる宝石とも呼ばれている。これを自宅で作れるのかと驚くが、細川曰く、実は簡単。細川は、普段、水と砂糖のみで作るが、ジュースの味わいや美しい色を生かして、寒天とともに「琥珀糖」も作った。
今回のジュースをアレンジしたレシピは、このジュースを丁寧に味わいたい、そんな細川の気持ちが伝わる一品である。
細川家の庭中に咲き始めた水仙の花。
(敬称略)
柑橘かん(4人分)
好みの柑橘 4房
柑橘寒天
糸寒天 5g
水 120g
柑橘ジュース 80g
グラニュー糖 200g
柑橘の皮 1個分
糸寒天は水に1時間以上ひたしてから、水気を切って鍋に入れる。
水を加え、ふたをして中火にかける。
沸騰して糸寒天が完全に溶けたら柑橘ジュースとグラニュー糖を加え、中火で混ぜながら煮詰める。
寒天液を小さなスプーンで取り、皿に落としてみて円の縁がにじまなくなったら火を止める。
柑橘の皮のすりおろしを加え混ぜ、バットなどに好みの厚さに流して固める。
柑橘を包みやすい大きさに切り分けて、くるりと包み、器に盛る。
※今回、柑橘ジュースはポメロジュースと、ジュースの材料であるポメロを使用。
*柑橘寒天を涼しく風通しのよい場所で1週間ほど乾燥させると琥珀糖となる。
*冷菓として供する場合は、寒天の量を減らしてやわらかく固める。(糸寒天1gに対し、水100g)柑橘蜜のほか、濃いめに淹れた烏龍茶と蜜を割り、よく冷やしたものをかけるとおいしい。(左の写真)
今回のお取り寄せ
ジュース
天水福祉事業会
商品:はみかんジュース・ミックスジュース・ポメロジュース
価格:720ml 1,296円
購入方法:オンラインショップで購入
細川亜衣 Ai Hosokawa
料理家。熊本・taishojiにて料理教室や料理会などを主宰。「トースト」(BON出版)、『料理集 定番』(アノニマ・スタジオ)、「旅と料理」(cccメディアハウス)、「taishoji cookbook 1.2」(晶文社)を発売中。
Photography by Ai Hosokawa
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