パティシエとともに、日本でも浸透しつつある言葉、ショコラティエとは、フランス語でチョコレート職人を意味する。いまや世界で認められている、感性豊かな日本のショコラティエ。日本のチョコレート文化を育み、進化させるショコラティエを紹介する。
八丁味噌に九条葱、紫蘇わさび、柿の種など、和素材チョコレートも手がけ始めた20年目
「ショコラティエ」という言葉がまだ珍しかった1999年、土屋公二は渋谷区富ヶ谷に「テオブロマ」をオープンした。テオブロマとは、カカオの学名であり、メキシコ・アステカ文明では「神様の食べ物」を意味する。2度フランスに渡り、チョコレートの名店で修業することになったのも、最初に口にしたチョコレートが、「神様の食べ物」のごとく印象的だったからかもしれない。「最初の渡仏は1982年で、偶然、チョコレート店で修業することになりました。本場のトリュフを初めて口にしたときには感動しました。『これがカカオの味だ!』と。日本で食べていたチョコレートとはまったく別物です。そこからチョコレートの虜でした」。
「テオブロマ」のオープンから20年が経った今、“ショコラティエ”という言葉も知られるようになり、数年前にはカカオ豆を仕入れ、独自にチョコレートを作り上げる“ビーン・トゥー・バー”という流れが日本にも上陸した。日本のチョコレート界の重鎮は「誤解を恐れずに言いますが、豆からやらない人はショコラティエじゃない」と断言する。原産地に行き、カカオ豆がどのような環境で栽培され、どのように発酵されているのか、どんな人が作っているのかを知りたくなる。そういう豆があるとわかれば、できあいのチョコレートでは飽き足らなくなる。つまり、ショコラティエだったら、豆から作らずにはいられないのだ。
“世界に愛される和の味”を目指すようになった土屋シェフの傑作「カキノタネチャレンジ」。柿の種はもちろん、青海苔の風味がホワイトチョコレートと意外な好相性。1,140円(税込)。
「チョコレート作りの精神と探求心は20年前と変わらない」という彼だが、変わったこともある。オープン当初は「フランスにないチョコレートは作らない」と、和素材は使わないと決めていた。しかし、世界のチョコレート業界の人々に会うにつれ、自由な発想力を持つ日本人ショコラティエに期待されることがわかってきた。その集大成が20周年を記念して作られたコレクション。八丁味噌に九条葱、紫蘇わさびという強い風味を持つ素材を、カカオの苦み、酸味の向こうにほのかに香らせ、フランスのチョコレート好きをもうならせた。
最近はカレーとチョコレートをうまく合わせたい、とスパイスの研究中だ。「いつも頭の中にチョコレートのことがある。ショコラティエってそういう人のことじゃない?」と、まだまだ面白いことをしてくれそうな巨匠はにやりとした。
「テオブロマ」の土屋公二シェフの、チョコレートをめぐる冒険はまだ続く。
(敬称略)
テオブロマ
東京都渋谷区富ヶ谷1-14-9
03-5790-2181
10:00~20:00/喫茶 10:00~20:00閉店(L.O. 19:00)
年中無休(年末年始を除く)
https://www.theobroma.co.jp/
Photography by Haruko Amagata
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