パティシエとともに、日本でも浸透しつつある言葉、ショコラティエとは、フランス語でチョコレート職人を意味する。いまや世界で認められている、感性豊かな日本のショコラティエ。日本のチョコレート文化を育み、進化させるショコラティエを紹介する。
野菊、焼きみかんなど、小山進シェフの「ミクソロジー」が生み出す組み合わせの妙味
数年前に、小山進の作るボンボン・ショコラ「ふきのとう」を食べたとき、「これは日本のショコラだ」と思った。日本らしい素材であるふきのとうを使っているから、というわけではなく、春の野草の持つほのかなで微妙な苦みが、チョコレートと合わさってもなお感じられることに驚いたからだ。その後も彼は大徳寺納豆、万願寺唐辛子といった冒険的な和素材との組み合わせに挑み続け、一方で産地に出向きカカオ豆自体への造詣も深めていった。
「日常の中で『あ、これ面白い』と思ったものに出会うと、そこからアイデアが膨らみ、では世界中のカカオの中でどのカカオを使おうか、どんな素材だったらイメージ通りの表現ができるだろうかと想像する時間が一番楽しいです」と小山は言う。出展9回目となった、2019年のサロン・デュ・ショコラ パリでは「世界のトップ・オブ・トップ ショコラティエ100」に選出された。それを記念し、2011~2018年に発表してきた作品から小山自身の思い出に残る10種類を選び、詰め合わせたのが「THE BEST of BEST10」。食べ手の想像力をかき立てる焼きみかん、クロモジ、野菊などのフレーバーが目新しい。
「『野菊の香り』は、野菊の花の素晴らしい香りを引き出し、より際立たせるためには野菊の葉の苦味を足すのが良いか、ベストなカカオは何なのかなど、その素材について調べ尽くして、今まで培った技術・経験を集約しました。ショコラを創作するうえで大切にしているのが味わいの「立体感」です。そのために、カカオと合わせる素材の特長が、互いを活かす組み合わせになることが不可欠です」。今、興味があるのは抹茶にハーブやフルーツを、‟ミクソロジーカクテル“の感覚で合わせたショコラだという。
ショコラティエの考えや思いが詰まったボンボン・ショコラだ。余すことなく味わいたくなる。おすすめの食べ方はあるのだろうか? 「一口で食べきらず、半分もしくは3分の1にカットして食べてみてください。それぞれのボンボン・ショコラには、カカオと素材のマリアージュ、奥に隠している味わいや仕掛けなどがあります。THE BEST of BEST10なら、いくつかを少しずつ食べてみて、もう一度、残りを食べてみてください。2回に分けて食べていただくことで、1度目に味わった香りや味わいを、より深く堪能することができるはずです」。
粉を使わず、チョコレートと卵だけで蒸し焼きにした、とろける舌触りとカカオのピュアな風味を楽しめるケーキ「テリーヌ ドゥ ショコラ ヘッコンダ」。焼き上がると中央がへっこむ、そのままの形をパッケージにも、名前にも活かした小山シェフならではのユーモアのセンスが光る。1,728円(税込)
お酒とのマリアージュ、たとえばワインやシャンパンなら、先にチョコレートを口に入れ、口の中でなくなりかけたときに飲むと、「チョコレートの油分に反発することなく、余韻でマリアージュを楽しめる」そうだ。ブランデーのようにアルコール度数が高いアルコールなら、チョコレートが溶け切らないうちに口に含む。チョコレートと過ごす時間をより豊かに…そんな思いがビシビシと伝わってくる、情熱のショコラティエが小山進だ。
斬新な発想と実行力で、トップランナーであり続ける小山進シェフ。これからも目が離せない存在だ。
Photography by Haruko Amagata
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