パティシエとともに、日本でも浸透しつつある言葉、ショコラティエとは、フランス語でチョコレート職人を意味する。いまや世界で認められている、感性豊かな日本のショコラティエ。日本のチョコレート文化を育み、進化させるショコラティエを紹介する。
スパイスクッキーが香るスペキュロス・プリュノーなど、ベルギー修行の思いを形に
半球型のチョコレートが口の中で割れると、ブルーベリーとカシスのガナッシュがとろっと流れ出る「ヴィオレ」。ガナッシュだけでなく、コンフィチュールでフレッシュ感を味わえるハート型の「フランボワーズ」。ベルギーで修業した村山太一らしい、モールド(型)抜きの色とりどりのボンボン・ショコラは、2010年にオープンした「パティスリー ショコラトリー シャンドワゾー」、そして2017年にできた「シャンドワゾー グラシエ ショコラティエ」どちらにも並んでいる。
「ベルギーに行くまでは、勤めていたパティスリーで年に一度、バレンタインの時期にチョコレートを作るくらいでしたから、チョコレートに目覚めたのはベルギーでの修業からです。技術を学び、できることが増えるとアイデアもふくらみ、誰かに食べてもらいたくなって、自分の店を持つときはチョコレートをやろうと決めていました」。ベルギーでは、子供もお小遣いを持ってパティスリーにチョコレートを買いに来る。そんな気軽さ、敷居の低さを自分の店でも目指している。
ベルギーでよく見られる、ナッツやドライフルーツが入った量り売りの板チョコ。ミルクチョコレートはドライマンゴー、マカダミアナッツ、クルミ、アーモンド、レモンピール入り。ほろ苦いブラッドオレンジピールとアーモンドの入ったダークチョコレートは、ロイヤルティーヌも入ってサクサク食感「プラック・ショコラ」800円/100g(税別)
「僕のボンボン・ショコラは、パティシエの考え方で作るボンボンです。チョコレートの個性を第一に考えるのではなく、合わせるフルーツなど、素材とのバランスをとる方法です。言ってみればチョコレートは脇役。でも、それでいいのかと悩んだときもありました」。ショコラティエならカカオ感を優先すべきなのではないか?フランボワーズが香るカカオではなくて、カカオ風味のフランボワーズでいいのだろうか?
その迷いも、チョコレートを喜んで買って行ってくれる客の反応で消えたという。「自分のやるべきことは普通のことを普通にやって、ちゃんとおいしく作ること。ベルギーに行った当時、どのケーキも普通で面白みがないな、と思ったものです。でも、慣れてくるとそれがおいしいし、ベルギーの消費者は新しいものは求めていない。自分もアイデア優先で味がついてこないものは作りたくないと感じるようになりました」。
「だって、コーヒー味のどら焼きっていりますか? 結局、食べたくなるのはあんこのどら焼きじゃないですか?」と村山は笑う。昔から変わらずおいしいものを変える必要はない、という境地。確かに、ジュッとガナッシュが溢れるシャンドワゾーのボンボンがくれる幸福感は、いつまでも変わってほしくないと思うのだ。
地域に愛されるショップをと願う村山太一シェフ。ケーキ、チョコレート、アイスクリームと、どれも食べてみたくなるものばかり。
(敬称略)
Photography by Haruko Amagata
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