パティシエとともに、日本でも浸透しつつある言葉、ショコラティエとは、フランス語でチョコレート職人を意味する。いまや世界で認められている、感性豊かな日本のショコラティエ。日本のチョコレート文化を育み、進化させるショコラティエを紹介する。
ガナッシュと餡が出合った、鎌倉名物のスペシャリテ「羊羹ショコラ」
円覚寺や建長寺など名刹を擁する北鎌倉に、2017年、暖簾をかけた和風な佇まいのショコラトリーができた。オーナーショコラティエは隣駅、大船のパティスリー カルヴァの田中二朗だ。彼はいわば‟挑むショコラティエ”。世界的なコンクールに挑戦し続け、受賞歴も多い。飴細工を得意としたが、ある世界大会に出場が決まるも、大会中止の憂き目に遭い、落胆しているところに「チョコレートをやったらいい」という助言をもらい新たな目標を見つけ、またたく間にチョコレートコンテストでの受賞歴を重ねることになる。
ショコラトリー カルヴァのスペシャリテのひとつは「羊羹ショコラ」だ。地元の人たちの「なにか鎌倉土産を」という声に応え、田中が作り出したのが、桐の箱に入ったガナッシュを土台にした蒸し羊羹。「伝統の生きる鎌倉で、ここでしかできないもの、日本人の自分にしかできないものを作ろうと思いました」。餡とチョコレートが互いの味を消し合わないようにと、生クリームを使わず、油脂部分をほぼカカオバターだけの‟水のガナッシュ”を合わせることで、チョコレートの味をダイレクトに表現した。滑らかなガナッシュは切れ味がよく、あとに続く繊細な餡の甘みを覆い隠すことなく、両方の味を楽しむことができる。
写真左から、ミルクチョコレートに特殊な製法で燻製香をとじこめた「スモーク」とみどりのダイヤと呼ばれるぶどう山椒の清涼感ある風味広がる「ぶどう山椒」。各250円(税別)
「時間をおいてもおいしいチョコレートを作るのは、ショコラティエの使命。自分の持つ技術の集大成がボンボン・ショコラです。購入2週間後に食べてもらえばわかると思います」。作りたてがおいしいのはチョコレートも同じだが、田中は味、香りが持続する製法を編み出したという。ボンボン・ショコラの「スモーク」がいい例だ。実体のない煙の香りをここまでチョコレートに閉じ込める方法とはいったいどんなものなのか? その謎を探り当てようと食べてみたものの、舌の上で溶けてなくなる頃には、チョコレートの長い余韻に酔いしれ、うっとりするに終わるだけだった。
田中二朗シェフ。ブーランジェリーの兄とともに開いた大船のパティスリー カルヴァも合わせ、鎌倉の人々の生活になくてはならない店となった。
(敬称略)
ショコラトリーカルヴァ 北鎌倉門前
神奈川県鎌倉市山ノ内407
0467-38-6259
10:00〜17:00
※季節により営業時間に変更あり
定休日 火曜日・水曜日
http://chocolaterie.calva.jp/
Photography by Haruko Amagata
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