パティシエとともに、日本でも浸透しつつある言葉、ショコラティエとは、フランス語でチョコレート職人を意味する。いまや世界で認められている、感性豊かな日本のショコラティエ。日本のチョコレート文化を育み、進化させるショコラティエを紹介する。
バルサミコ×イチジク、白トリュフ×栗など組み合わせの妙と若冲をチョコレートで表現
箱根・小涌谷に2013年に開館した岡田美術館は、近世および近代の日本画と、中国、韓国、日本の陶磁器を中心にコレクションを常時約450点展示している。圧巻は縦12m、幅30mの金地パネルに風神雷神図屏風を現代に創造的に蘇らせた、福井江太郎による大壁画「風・刻(かぜ・とき)」だ。ミュージアムショップではこの傑作が小さな箱に収められ、来館の思い出に購入できる。しかも美味しい。
葛飾北斎、伊藤若冲など近世日本の画家たちの色鮮やかな作品が表現されているのは、四角いボンボン・ショコラの上だ。鮮やかなのは絵だけでなく、その味わいのひとつひとつにも言える。手がけるのは同館専属のショコラティエ、三浦直樹だ。「ブルガリ イル・チョコラート」ほか、チョコレートの名店で腕を振るってきた第一人者のひとりだ。
「美術館オリジナルのチョコレートを作ることになり、まずは画家や作品にまつわる食材も探したのですが、やはり情報が限られていた。そこでたどり着いたのが、美術品そのものをチョコレートの表面に表現するということでした」。一方で、ショコラティエとしての技量はチョコレートと食材、食材と食材とのハッとさせられる組み合わせに遺憾なく発揮されている。
上段/和栗×タイム、カシス×ブラッドオレンジ、ブドウ×ゴルゴンゾーラチーズ、胡桃×メープルシュガー 下段/ハイビスカスベリー×ココナッツ、バナナ×ローズマリー、ベルガモット×アールグレイ、ピーチアプリコット×ベルベンヌ。Okada Museum Chocolate 『波と富士』4,800円(税込)※4月5日より同館で販売開始。バレンタイン期間は都内百貨店で先行販売中。
たとえば北斎の「冨嶽三十六景」のうち同館収蔵の「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」を描いた今年のチョコレートの中には、「ブドウ×ゴルゴンゾーラチーズ」というフレーバーがある。巨峰をメインにいくつかのブドウとクセとコクのあるチーズの組み合わせは、わずかな塩味もあり料理にも通ずる味わい。5つのボンボンを詰めた『若冲・孔雀鳳凰』では、酸味と熟した甘みを楽しめる「ビンテージバルサミコ×イチジク」が舌に新鮮だ。
「チョコレートの主役はあくまで素材(=フレーバー)。チョコレートを調味料という感覚でとらえるのも、私のチョコレートの特徴です」という三浦。自分の世界観を守りながら、今までにないチョコレート作りを続けている。
「デカダンス・ドュ・ショコラ」、「ブルガリ イル・チョコラート」など、チョコレートの名店での豊かな経験が、フレーバーの組み合わせの妙を引き出すと語る三浦直樹シェフ。
(敬称略)
岡田美術館
神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493⁻1
0460-87-3931(代表)
9:00~17:00(入館は~16:30)
休館日12月31日、1月1日、展示替期間
https://www.okada-museum.com/information/archives/170.html
Photography by Haruko Amagata
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