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「光る君へ」言いたい放題レヴュー

2024.5.9

「光る君へ #18 岐路」「皇子を産め」と定子に迫る伊周。玉座に乱入する道隆。親子だから、執着心も似ているのかも。

「皇子を産め」親子揃っての、凄まじいまでの執着心。
でも、それが当時の真実だったのかも。

 

 

今週のお当番のM男です。「皇子を産め」と定子に迫る伊周。やはり親子なのでしょうか。前回の道隆と同様の凄まじいまでの執着心。子どもができない妹に向かって「素腹の中宮」だなんて、酷すぎます。でもそれが当時のリアル宮中だったのでしょうね。

 

 

とうとう道兼も死んじゃいました。最後は、いい人になって道長に抱きしめられて。なんだか解せないなぁ。あの衝撃的な初回の刺殺といい、その後のSぶりといい、花山天皇とどっちこっちの変態キャラだったのが、いつの間に良心の人になったのでしょうか?公任の家で飲んだくれていた道兼を道長が救い出したときから? 確かに『栄花物語』や『大鏡』には、道兼は冷酷だとか素行が悪いとか記されているようですが、だったら変態キャラのままでもよかったのに。後々、まひろの娘が道兼の息子と結婚するので、推測するに、娘の義父がヒールのまま死んでしまうと、都合が悪いからなのでしょうか。強烈なキャラだったので、なんだか肩透かしにあったような気分です。

 

 

その一方で、演じていた玉置玲央さんは大熱演でした。昨年、吉田鋼太郎さんと小栗旬さんが出演するシェイクスピア劇『ジョン王』を観に行き、妙に存在感のある女装の役者がいるなぁ、と思っていたら、それが玉置さんだったんです。先日NHKで放映されていた下山事件を題材にしたドラマでも、出番はそれほど多くなかったけど、やっぱり存在感ありました。きっとこれから、もっともっと活躍するのでしょう。

 


前回の二番煎じの感があり、イマイチ盛り上がりに欠ける?

 

伊周が定子に「皇子(みこ)を産め」と迫るシーンも、それなりに鬼気迫る場面ではありましたが、前回で道隆が一条天皇に御簾越しに迫るシーンとどことなく似ていて、迫力でいえば井浦新さんの方が数段上。結界である御簾を蹴破らんばかりにして道長が病床の道兼のもとに駆け寄るところも、やはり前回、道隆が御簾を乗り越えて玉座ににじり寄る場面の方が数倍インパクトがあり、今回なんだか二番煎じの感がなきにしもあらずで、M男的にはあまり盛り上がりませんでした。前回の井浦新さんは凄かった。御簾の内に倒れ込んでくる場面など、演技もそうですが、よくぞその演出を考えたと、拍手喝采でした。

 

 

それにしても、「皇子を産め、皇生を産め」と迫るあの執着心は、入内させた家の者にとって切実な思いだったのは間違いないでしょう。N女さんも書いていましたが、これまでは、清少納言が活躍した華やかなサロン、というイメージでしかなかった中宮定子とその周辺でしたが、こうした側面に光を当てて生々しく描かれたことは、これまでにあまりなかったような気がします。なかなか良いのでは。また、だからこそ、呪縛に捉われず、自分の才能を発揮させていた清少納言や紫式部が、軽やかで魅力的に見えてくるのでしょうね。ドラマの清少納言も、最初は小憎たらしく思えましたが、今では好感度アップです。

 


そりゃないだろ、まひろ。道長が可哀そう!!

 

さてさて、肝心のまひろと道長です。終盤のあの場面は、なんだか解せませんなぁ。例の廃屋で偶然出会うというシチュエーションを設定したのに、なに? すれ違い? もしかしてお互いが幻を見ているとか? 確かに、右大臣まで登り詰めた道長とまひろとの間には、今や接点はなく、あるとすれば昔の思い出のみ。久しぶりに出会ったとしても、話すことなど何もないかもしれません。でも、なんだかなぁ。「昔の己に会いにきたのね」なんて冷たく突き放さなくてもいいのに。濃厚なシーンの再現は無理かもしれませんが、一言くらい声かけてもいいんじゃない? 視線も合わさないんだから。今回のタイトルの「岐路」が、それを暗示しているの?

 

 

道長、可哀そう。そして、まひろ、怖っ。それとも、過去に捉われない、確固たる女性になったということ? メチャメチャ好意的に解釈すると、まつりごとによってこの国を変えていくために歩み始めた道長に対し、自分はまだ何も成していないから「話すことなど何もない」と自己規制したとか? だとしても、思い出の場所に来て、思わせぶりに佇むなよ、と言いたいM男です。まあ、ここで安易に縒りが戻ってしまっても、それはそれでなんだかなぁ、なので、このまどろっこしさが、ドラマを引っ張るエネルギーになっているのでしょう。お互いが好意を持っていることに気づいているのに、立場の違いでなかなか前に進むことができない。ある種のすれ違い。それって、かの『愛の不時着』にもどこか通じるものがあったりして。

 

次回の予告で、まひろがようやく十二単衣を纏っているシーンがちらりとありました。おっ、いよいよまひろも宮中に赴くのかなと、少し期待です。強烈なキャラクターが相次いで去り、道長ひとりと、ややインパクトの薄い公任や行成ばかりでは、どうも今後の展開がパンチに欠けるような気がします。どうなっていくのでしょうか? やや不安です。

 

 


あの人がこの歌を詠んでいたんだ!
百人一首の世界がちょっと身近に

 

蛇足かもしれませんが、前回の放映でとても印象に残ったのは、道隆が一条帝に迫る場面もさることながら、死の床で「忘れじの行末まではかたければ……」と、愛妻の貴子が作った歌を、息も絶え絶えに吟ずるところです。あれれ、その歌って百人一首にあったやつじゃん。でも、確か作者は「ぎどうなんとかの母」とかいう女性だったはず。調べてみると、やっぱり貴子イコール「ぎどうなんとかの母」で、正しくは「儀同三司母」というらしいです。その儀同三司というのは、後に准大臣となった伊周の役職の唐名だそうです。勉強になるなぁ。右大将道綱母のときもそうでしたが、かつて丸暗記した百人一首の世界が、急にリアルに感じられ、それはそれでなかなか面白いものでした。

 

紫式部や清少納言はもちろん、イケメン公任や、倫子の教育係だった赤染衛門なども、百人一首に採られた歌人でもあるので、今後、彼女彼らの歌が、そして満長の、かの有名な「この世をば我が世とぞ思ふ……」が、どのようなタイミングで、そしてどのような解釈で登場するのか、それはちょっと興味のあるところです。















「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

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