NHK大河ドラマ「光る君へ」言いたい放題。今週は少し趣向を変えて、担当同士による対談、いや放談。ザックバランなおしゃべりなだけに、言いたい放題の内容は、より過激に。
面白かったのは、物語が動き始めたから
N子 「今回は面白かったー!」
M男 「僕もそう思った。どうしてだろう?」
N子 「ようやく、物語が動きだしたからだと思うわ。人物紹介や設定説明がやっと終わった感じ。道長も詮子(あきこ・吉田羊)も、みんな腹黒くなってきた」
M男 「まひろまで、父のため、家のために左大臣家に行くなんて言いだして、権謀術数の渦のなかに入り込んで行くしね。でも、ひとつ分からないのは、詮子はなぜ左大臣を呼び出して、脅さんばかりに、力になってほしいと頼んだの?」
N子 「花山天皇に毒を盛った父への復讐よ。詮子って、一条天皇の母親だけど、一条朝では国母として権力を握り、のちには東三条院として、初の女院号を受けた人よ。だから相当権力志向の強い女性だったはず」
M男 「そうなんだ。だからあのシーンはあながち荒唐無稽ではなく、無駄な場面じゃないんだ。前に出てきた盗賊も、今回また出てきたしね。直秀(毎熊克哉)がその一味だろうな、というのはなんとなく予想ができたけど、矢を受けた腕に、次回あたりは包帯巻いて登場し、まひろが「どうしたの」なんて言うんだろうな。あるいは道長とも会ってしまうとか」
だんだん少なくなってきた意味不明シーン
N子 「もしそうだとしたら、ちょっとあざといわね。今回、意味不明だったシーンは、散楽のメンバーの前で、五節の舞で倒れた女官のストーリーを、まひろが自ら創作して得意げに披露するところ。今後、回収はあるのかしら?」
M男「おもしろき事という言葉に、まひろが妙に頷くシーンが次にあったから、『枕草子』への伏線なのでは」
N子 「たしかに、今回の最大のウリは、ききょうこと清少納言の登場だけど、どうしてあんな風に、デフォルメして描くのかしら。清少納言は鼻もちならぬ女だと、紫式部がこきおろしていることは、比較的多くの人が知ってる事実だけど、あそこまで極端にしなくてもいいのに」
M男 「清少納言と紫式部が、それぞれ定子と彰子に仕えるのは、時代が微妙に重なっていないから、実際に遭遇したかどうかも定かでないしね。極端といえば、漢詩の会に行くようにと父から言われた弟が、『ムリっ、ムリっ』と断る場面も、なんだかなぁ……。あの口調、今時の高校生じゃないんだから。でも、漢詩の会の場面は、なかなか感動した。今回、面白いなぁと感じたのは、僕的にはこのシーンがあったからということも大きいかも。当時の宮中で必要不可欠だった、漢詩や和歌の存在を製作側がないがしろにしていない、という点が、なんだか好感持てる」
テレビ見ながら「X」もチェック。オンタイムでいろいろな投稿が
N子 「意味不明なシーンもだんだん少なくなってきたわ。私ね、テレビを観ながら、オンタイムで同時に「光る君へ」に関する「X」をウォッチしていたんだけど、それぞれの貴公子たちが自作を披露する場面では、即座に道長の漢詩は白楽天の何々だ、公任の漢詩は何々だ、と投稿されてくるの」
M男 「ひぇ~。すごいね」
N子 「博識というか、オタクというか。でも、そういうことで、今まで見当もつかなかった平安時代のことが少しでも身近に感じられるのは、とてもよいことだと思うわ」
M男 「そうだね。さっき、清少納言と紫式部が宮中にいた時代は微妙に重なっていない、なんて偉そうなこと言ったけど、僕もこのところ、源氏物語や紫式部のことを題材とした新書を読んだりしてます。ドロナワもいいところ」
N子 「すごい。ハマってる!でも平安時代についてこんなに興味が湧くなんて驚きです。織田信長や豊臣秀吉が主人公になっても、今さらそのあたりの本を読もうとは思わないもの」
M男 「そうそう。ドロナワの知識を披露すると、今後はあのエロ花山天皇が兼家率いる右大臣家の陰謀で無理やり退位させられたり、道隆(井浦新)の子どもたちと道長の間に確執が生まれたりと、なかなか波乱万丈」
N子 「そうこなくっちゃ」
M男 「道長は、安倍晴明のことも相当利用していたみたい」
N子 「みんなが腹黒くなってドロドロになってほしいな。脚本の大石静先生が、随分前に『今回のドラマで描くのはセックスとバイオレンスです』って、どこかのインタビューでおっしゃっていたので、もうワクワク」
M男 「ひぇ~、だから花山天皇はあんなことしたんだ」
※「X」上で白熱していた、漢詩の会で道長が読んだのは、白居易の「禁中九日對菊花酒憶元九(禁中九日菊花酒に対し元九を憶ふ」(『白氏文集』巻十四)。恋の歌ではなく、友人の元稹を思って詠んだものらしいです。「X」のリサーチ力、おそるべし。
賜酒盈杯誰共持
宮花滿把獨相思
相思只傍花邊立
盡日吟君詠菊詩
賜酒 杯に盈つれども誰か共に持せん、
宮花 把に満ちて独り相思ふ。
相思ひて只花辺に傍ひて立ち、
尽日君が詠菊詩を吟ず。
道長と紫式部の関係はどうなるの?
M男「いきなり下世話だけど、結局のところ、道長と紫式部は関係があったの?関係というのは、いわゆる男女の……」
N子 「いろいろ説があるみたいだけど、私は男女関係はあったと思う! そういうお手付きの女房のことを、召人(めしうど)と言うんですよ。貴人の身の回りのお世話をし、愛人でもあるという……」
M男 「そうか……。単なる経済的なパトロンだったわけじゃないんだ」
N子 「決まってるじゃないですか」
M男 「ドラマではどうなるのかな? 純愛で通すのかな、それともそれとなく匂わせる?」
N子 「匂わせると思う。御簾の影に紫式部を引き入れて暗転とか、後朝(きぬぎぬ)のシーンを出すとか」
M男 「うーむ。純愛で通してほしいような、そうでないような。ところでさ、次回の予告はいったい何だったの。NHKも本当にあざとい」
N子 「えっ? なんのことですか?」
M男 「なんで、公任(町田啓太)の上半身もろ肌脱ぎを、ちらっと見せる必要があるの?」
N子 「若い女子に見てほしいからに決まってるじゃないですか! きゃー町田啓太さん素敵ーって」
M男 「僕が覚えている限りでは、『八重の桜』で西島秀俊さんが、『鎌倉殿の13人』で山本耕史さんが、無意味にムキムキの上半身を晒していた。『どうする家康』は、途中で離脱したからわからないけど、どうせマツジュンも脱いでたんじゃないのかな。まったく」
N子 「若い女子が大河ドラマを見るようになるには、イケメンにひと肌脱いでいただかないと」
M男 「だったら、おじさんがもっと見るように、吉岡里帆さんを出してほしいな」
N子 「まだ、そんなこと言ってる。ともかく、ドラマがいよいよ動きはじめ、登場人物がそれぞれ影を持ち始めたのは、とてもよいこと。来週に期待大です!」
「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……
Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!
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