「光る君へ」言いたい放題レヴュー

Lounge

Premium Salon

「光る君へ」言いたい放題レヴュー

2024.3.25

「光る君へ #12 思いの果て」妾でも構わない! 決断したまひろに冷酷な現実が

先々週、拙稿で「ゴッドファーザー」のことに触れたら、先週はやたらと「ゴッドファーザー」がらみの記事がサイトに溢れ、もしや自分の記事が広く読まれたから? とほのかな期待を抱いていたのですが、道長こと榎本佑さんが、「演技としてゴッドファーザーのマイケルを参考にしています」とインタビューで語っていらしたんですね。でもその記事が流れたのが3月18日。拙稿の方が5日ほど早かったもんねと、ささやかな自己満足に浸っているM男です。

 

 

父・為時の妾の最期に始まり、さまざまな女性のさまざまな想いが錯綜

 

さて今回。前回のような、玉座に生首とか、飛び散る数珠のようなインパクトあるシーンはそれほどありませんでしたが、なかなかに切ない回でしたね。まひろ、可哀そう。思わず、ぐっときました。道長のバカ!

 

 

いきなり、父・為時の妾の末期から始まり、いやにさばけたその娘まで登場。道長が婿入りする倫子は相変わらずのお嬢かと思いきや、内に秘めた熱き心を持ちしかも大胆。その真逆ともいえる「心も体も棄て」、藤原家に対する復習の炎を冷たく燃やす明子。そして、ますます打算的な行動に走る詮子。さまざまな女性が矢継ぎ早に登場しました。





たとえ御簾の影に隠れ伏せていようと、
女性の数だけ、喜びや悲しみがそこにはある

 

紫式部や清少納言などの一部の才女は別として、御簾や几帳の影に隠れ、香を焚きしめてひっそりと息づいている十二単の御姫様。現代人が思い描く当時の女性のイメージは、今まではそれが一般的でした。『光る君へ』は、そんな単純なメージ像を覆そうとしているのでしょうね。多少それが誇張されていようと、女性の数だけそれぞれの想いや感情、喜びや悲しみは、間違いなくあったはすですから。

 

 

 





妾でもいい。父が介護する女性の姿を見て、決断したまひろ

 

 

以前から登場していた為時の妾の存在は、最初は『源氏物語』の末摘花をモチーフにしているのかなぁ、などと呑気に考えていましたが、今回でその意味がわかりました。つまりは、たとえ妾であっても、最期を看取ってくれる人がいて、しかもその人も妾のことを深く愛していた。そんな女の人生もあるという事実を、まひろが目の当たりにしたということです。

 

 

 

あえて数多くの女性を登場させた今回。まひろも、今までにさまざまな女の人生を見聞きし、かつ書物から読み取ってきたことでしょう。「北の方にしてください」と打算的なことを懇願した前回のまひろは、ある意味では当然のこと。でも、道長からの文を受け取り、逢瀬の場所へ走るまひろの脳裏に浮かんでいたのは、やつれ果てながらも、微笑みさえ浮かべて死んでいく、父の愛人の姿だったに違いありません。

 

 

だからこそ「妾でも構いません」。道長にそう告げようと、走るまひろ。それなのに道長ったら。あげくの果てに、御簾の中にいる倫子のもとに、なかば夜這いするなんて。まひろへの思いを断ち切るための行動なのでしょうが、それにしても……。

 

家へ辿り着いた傷心のまひろ。弟からお酒を勧められて、「酔ってしまいそう」とつぶやきます。

 

そういえば、吉高由里子さんも、倫子こと黒木華さんも,お酒のコマーシャルに出てたなぁ、おいしそうにビールだのハイボールだの飲んでたなぁと、場違いな、どうでもよいことを、思い出したりもしました。我ながらくだらない連想で情けない!

 




ほんとうに、「ゴットファーザーPart1」のマイケルとそっくりな道長

 

そして再び、またまた「ゴッドファーザーPart1」を思い出してしまいました。敵のボスを殺し、コルレオーネ家のルーツであるシチリア島へ逃げたマイケルことアル・パチーノは、島の娘と結婚します。初めて観たとき、あれれ? マイケルはニューヨークに恋人がいたのではと、えらく不思議な気がしたものでした。

 

 

島の娘は結局、爆殺されてしまうのですが、結婚式のときから、すでにマイケルは無表情。花嫁を前にしても、少しも嬉しそうではないのです。それが、倫子のもとに忍んでいく時の道長の醒めた表情にそっくり。たしかに、榎本さん、アル・パチーノを意識してるわい、と改めて思いました。



まひろと道長は、これで永遠の決別? そんなことはないよね

道長と決別したかのようなまひろですが、本当に二人は別れてしまったのでしょうか。まだまだ先は長いです。これでいきなり『源氏物語』の執筆に取りかかる、というわけでもなさそうですから、ヨリが戻るときが来るのでしょうか?

 

 

前回の「言いたい放題」で、N子さんは、やがて生まれてくるまひろの子の父親は道長と、大胆な「妄想」を掲げていましたが、まさか。でも、もしかしたらあり得るかも。

 

 

バリバリの恋愛ドラマモードだった今回ですが、道兼の動きに注視しろと、公任パパ。次回は、また何やらきな臭いことが勃発しそうな予感。目が離せません。



「庚申の夜」は、今でも「オヒマッツァマ」として地方に残っています

 

余談ですが、庚申の日の夜は寝ずに起きているという、いわゆる「庚申講」は、筆者の実家、岐阜の片田舎でもありました。その夜は、本家宅に、「屋敷」と称する分家の人間が集まり、仏壇と神棚の前で祝詞のような呪文を唱え、その後は宴会です。さすがに朝まで、という訳ではありませんでしたが、子ども心に、法事でもなんでもないのに、なんでぞろぞろと人がやってきて、夜遅くまでお酒飲んでるのかなぁと、不思議に思っていました。

 

 

きわめつけは、その寄合の名前です。田舎の人々は「オヒマッツァマ」と呼んでました。今にして思えば「お日待ち様」、つまりお日様が出てくるのを待つ、ということです。そして、今でも「オヒマッツァマ」は、定期的に開かれているそうです。

 

 

ナレーションでも、「江戸時代以降は庶民にまで広まりました」と紹介していましたが、岐阜の田舎にも、1000年以上前の風習が伝わり、多少形を変えつつも行われているって、なんだか少し素敵です。

 


「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。

Lounge

Premium Salon

「光る君へ」言いたい放題レヴュー

Premium Salon

ページの先頭へ

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。