紫式部の幼少期が描かれた「第一回 約束の月」
「源氏物語」は描かないとしつつ、におわせ伏線あり!
紫式部の幼少期が描かれる初回「約束の月」。雨漏りで目が覚めるお宅にお住まいで、すごい貧乏貴族っぷりです。いきなり気になったのは、まひろという名前。平安時代の女性の名前は伝えられていないものが多いし、紫式部という名前も女房として働いていたときの名前(は、もしやこれが本当の源氏名?)。とはいえ、この時代の貴族の女性の幼名としてはどうなんでしょうか。違和感ありです。はっきりとはわかっていませんが、紫式部の本名では?と目されているのは「藤原香子(かおるこ、きょうこなど諸説あり)」。まひろというのは、あまりに現代的ではないでしょうか。
のちの道長である三郎と偶然出会って、幼なじみになるという設定も違和感あり。いくら貧乏貴族の娘とはいえ、平安時代に女性が簡単に外出ができるとは思えない。「ドラマだから」とはいえ、ちょっと強引な気がしました。そもそも時代考証を担当されている倉本一宏先生も、ふたりが幼なじみという設定を知って驚いたそうです。ありえないとNHK側に伝えたそうですが、もう発表しちゃったのでそれで行きます、というお返事だったとか。
でも当時の慣例に基づこうとすると、物語が動き出さないんだろうなとは思います。なので、平安時代っぽい味付けの時代劇と思って見るのがいいのかもしれません。
NHKの番組特設サイトの概要には、こう書いてあります。「大河ドラマ「光る君へ」(2024年)。主人公は紫式部(吉高由里子)。 平安時代に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた女性。彼女は藤原道長(柄本佑)への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で、光源氏=光る君のストーリーを紡いでゆく。変わりゆく世を、変わらぬ愛を胸に懸命に生きた女性の物語」。
このドラマはあくまでも紫式部という女性の生涯を描くもので、「源氏物語」を描くわけではないそうです。脚本家の大石静さんは以前、劇中劇も入れるつもりはない、とおっしゃっていました。詳細が伝わっていないから、自由に創作できるとはいえ「源氏物語」を描かなくても、成立するの?という疑問があります。
その割には、「源氏物語」への伏線とも思えるポイントがちょいちょい出てくるのです。飼っていた鳥を逃がしてしまうシーンや、三郎と偶然出会い、偽りの素性を語るシーンとか。明らかに「源氏」からの引用なので、これは知っている人をニヤっとさせるだけではなく、今後「源氏」を執筆していく渦中が描かれていくとして劇中劇が必要なのではないでしょうか。
「光る君へ」初回、衝撃のラスト。ちょっと鬱な展開を予想できそうな伏線が?
初回ラストには驚きました。三郎(のちの道長)のすぐ上の兄・道兼が、まひろの母・ちはやを刺し殺してしまうんです。紫式部の母は、紫式部がかなり幼少期に亡くなっているとされているので、創作は自由なんですが、しかしこの展開はマズイですよ。「光る君へ」はどこまで描くのかわかりません。かなり晩年まで描くのでしょうか?もしそうなら鬱な展開なんです。
というのも史実では、紫式部と夫・藤原宣孝(佐々木蔵之介さんが演じています)との間に生まれた一人娘・賢子は、道兼の息子と結婚するんですよ!これはどんな因縁ですか?カルマですか?もし紫式部の晩年まで描くとなると、このあたりがドラマとしても見せどころになってくると思います。
ところがです。娘のエピソードまで行くかどうかわかりませんが、その前にもうひとつ鬱な展開がありそうなんです。
まひろは母・ちはやが殺されたとき、従者が「道兼さま」と呼ぶのを覚えていました。自邸に母を連れ帰り、父・為時に「道兼に殺されたのよ」と言うんですが、字幕をつけて見ていた方がこの部分、「ミチカネに殺されたのよ」とカタカナで書いてあったと。で、父は兼家の肝いりでのちの花山天皇に漢文を教えているので、道兼が誰だが知っている。でもここはあえて母は病気で死んだことにする、とまひろに告げます。
……ということは、将来娘の賢子が道兼の息子と結婚するってエピソードの前に、まひろの思い人・道長の兄が実は母を殺した人、ってことが明かされる回もあるってことですね。母を殺したミチカネは道兼であったと。ちょっと面白くなりそうな展開かも。
ユニークな俳優陣に期待
Premium Japan文学部のメンバー、Sさんは吉高由里子さんのファン。とても色っぽいところがいいそうです。私は円融天皇役の坂東巳之助さんがよかったです。ふとした間の取り方などが亡き父・坂東三津五郎さんによく似て、やんごとなき方の雰囲気もばっちり出ていました。絶妙でした。
円融天皇に入内する、三郎のちの藤原道長の姉、藤原 詮子(ドラマではあきこ)を、女優の吉田羊さんが演じているのですが、さすがに15歳の役はどうなんだろう……紫式部も道長も子役を使っているのだから、詮子も子役でいいのに、と思ってしまいました。
主演の吉高由里子さんについては、編集部Sに譲ります。吉高さんの魅力について大いに語ってくれること期待です。
史実を超えた展開が目白押しの「光る君へ」。ついていけるか不安がよぎりますが、来週が楽しみです!
Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレビューいたします。初回は編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!
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