九島辰也連載 フェラーリ
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カーライフその先の未来へ

2025.2.28

「フェラーリ 12(ドーディチ)チリンドリ スパイダー」V12サウンドを特等席で堪能する











昨年、ジャパンプレミアしたフェラーリの最新モデル12(ドーディチ)チリンドリをご存知だろうか。

イタリア語の「12気筒」をそのまま名前にしたことでも話題となったモデルだ。特徴はまさにそのエンジンで、自然吸気のV12を搭載する。812スーパーファストやプロサングエに積まれたものの進化版だ。ランボルギーニが12気筒にモーターを組み合わせるのに対し、フェラーリは過給器のない自然吸気ユニットで勝負し続けている。





そんな12チリンドリのオープントップモデル、スパイダーに試乗してきた。場所はポルトガルの首都リスボン郊外。エストリルサーキットで知られるエストリルの隣町にあたるリゾートである。海沿いを北上するとヨーロッパ最西端を示すロカ岬が見えてくるエリアだ。






驚くほどカッコいい仕上がりに気分が上がる

 

フェラーリが有するオープントップモデルには様々なネーミングが使われる。今回のスパイダーもそうだし、GTSやアペルタもそう。カリフォルニアやスーパーアメリカなんてのもそんなモデルに付けられてきた。250GT系のカリフォルニアはもはや伝説のクルマだ。

 

その辺をフェラーリスタッフと話していると、特に名前をつける決まりはないらしい。2シーターがスパイダーという図式ではなく、ある程度フィーリングで決めているようだ。








1950〜1960年代のフェラーリ製オープントップグランツーリスモから、インスピレーションを得て開発された。 1950〜1960年代のフェラーリ製オープントップグランツーリスモから、インスピレーションを得て開発された。

1950〜1960年代のフェラーリ製オープントップグランツーリスモから、インスピレーションを得て開発された。





では、12チリンドリスパイダーの初見だが、かなりカッコよく仕上がっている。強引にオープントップにしたわけではなく自然なフォルムが好印象だ。理由はシンプルで、クーペと同時に開発していたから。マーケティング上の戦略で、発売をクーペ後にしているが、仕上がりは同じと考えられる。デザイナーのファーストドローイングも同タイミングと理解して良さそうだ。








なので、細部にも工夫が盛り込まれている。シートはこれだけレーシーなバケットタイプでありながら、首元を温風で温めるネックウォーマーを装備している。シートヒーターと合わせれば、冬のドライブも快適間違いなし。さらにいえば、マッサージ機能も付いている。プロサングエで我々ジャーナリストを驚かせたあの機能が12チリンドリでも採用されたのだ。操作はセンターモニターはもちろん、助手席前の小さなモニターで行えるので、コドライバーはドライバーに気を使わずに自由にコントロールできる。




フェラーリの最新コンセプト「デュアル・コックピット・アーキテクチャ」を導入したインテリア。 フェラーリの最新コンセプト「デュアル・コックピット・アーキテクチャ」を導入したインテリア。

フェラーリの最新コンセプト「デュアル・コックピット・アーキテクチャ」を導入したインテリア。





別次元のサウンドが楽しめるファラーリV12の破壊力

 

では、走りの印象へ話を移そう。

 

ステアリング上のスターターでこの大きなエンジンが目覚める。そしてギアを入れ走り出すのだが、第一印象はかなり普通。プロサングエの時もそうだったが、拍子抜けするくらいマイルドに動き出す。ユーザーフレンドリーであることは確かだ。



そのまま海岸線を通ってオープンエアの状態を試してみたが、工夫されたエアロダイナミクスで、風の巻き込みは少なく快適なキャビンが保たれた。ドライバーのポジションが低いので周りを囲まれるように座るのも関係しているであろう。それに、リアの2つの膨らみの間にウインドシールドが設置される。電動式でそのガラスを上げれば後方からの風の巻き込みは抑えられるという設計だ。





全長4733mm、全幅2176mm、全高1292mm 全長4733mm、全幅2176mm、全高1292mm

全長4733mm、全幅2176mm、全高1292mm。








フェラーリ12チリンドリの国内価格は5674万円、12チリンドリ スパイダーは6241万円。 フェラーリ12チリンドリの国内価格は5674万円、12チリンドリ スパイダーは6241万円。

フェラーリ12チリンドリの国内価格は5674万円、12チリンドリ スパイダーは6241万円。




よってオープントップのままある程度の速度域まで快適に走り続けられる。と同時に、キャビンはフェラーリのエキゾーストノートを聴くのに最高の席であることを再認識する。あの乾いた官能的なサウンドをかなりの近さでずっと聴いていられる特等席だ。その意味でこの12気筒は破壊力抜群。やはりフェラーリのV12は明らかに別次元のサウンドであることがわかった。




とはいえ、この830cv(イタリアの馬力表示)のパワーユニットを思い切り堪能するにはそれなりの場所が必要となる。今回は海岸線と峠道、高速道路といった試乗コースだったが、そのパワーを活かせるシーンはなかった。なので、1万回転回るエンジンを低いギアで回して音を楽しむことができても、本来のスピード感は味わっていない。それを鑑みると、きっと主催者側としてはオープントップで気持ちのいい景色を単横してもらいたい、という意図なのだろう。


いずれにせよ、スパイダーボディの12チリンドリはスタイリッシュな仕上がりで、オープントップドライブに関してはかなり対応しているのがわかった。存在感は大きく艶っぽさもある。シーンとしてはヨーロッパの古城が似合いそうだ。そのクルマ寄せに静かにアプローチするこのクルマの姿を妄想する。



九島辰也 Tatsuya Kushima

 

モータージャーナリスト兼コラムニスト。現在、サーフィン専門誌「NALU」のメディアサイト編集長、メディアビジネスプロデューサーを担当。これまで多くのメンズ誌、ゴルフ誌、自動車誌、エアライン機内誌などの編集長を経験している。メディア活動以外では2024-2025日本カーオブザイヤー選考委員、(社)日本葉巻協会会員、日本ボートオブザイヤー選考委員、メンズゴルフウェア「The Duke`s Golf」のクリエイティブディレクターを務めている。

 

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