クラウンの新モデル「クラウンエステート」がついに登場
クラウンに新モデルが追加された。クラウンエステートである。
ご存知のように現行型クラウンはこれまでと趣が変わっている。最初に発表されたのはクラウンクロスオーバーというモデルで、既存の概念を覆した。王道セダンを突っ走ってきた従来型とは別物の背の高いファストバックとして登場したのだ。当時の社長、豊田章男氏の一言で根底から刷新された。
しかも発表と同時に当初から4つのボディタイプがお披露目され話題となった。これまでも標準ボディのクラウンと社用車を色濃くしたクラウンマジェスタという2つのタイプを並べたことはあったが、どちらもセダンであったのだから話は別。今回はクラウンクロスオーバーに続き、クラウンスポーツ、クラウンセダンが市場投入され、最後にクラウンエステートとなる。これで四部作が完成されたと言っていいだろう。


新型クラウン4モデルが並ぶ。
2022年のクラウンクロスオーバーから今年のエステートまでに時間がかかったのには理由がある。世界的規模の紛争やコロナ禍の影響で、サプライチェーンが機能しなかったからだ。また、今回は世界戦略車であることも関係する。欧米のレギュレーションに合わせるなど、これまでになかった仕向地仕様の作業が必要となった。
ただ、時間がかかった分内容を煮詰められたというポジティブな側面もある。試乗会場でのインタビューでは、開発現場はたっぷり時間がかけられたと口にしていたし、我々メディアも実際にステアリングを握ってその完成度の高さに驚かされた。ワインディングが連なる箱根の尾根を走らせながら、軽快なハンドリングに「これがクラウン?」と思わず口にしてしまうシーンが幾度かあったほどだ。
さらに言えば、すでに市場導入されているクラウンクロスオーバーにも年次改良が施され、走りのパフォーマンスを上げている。こういった発売後にクルマを磨き上げるスタンスは素晴らしい。ここ数年のトヨタはその辺も抜かりなく行なっている。
進化し続ける「クラウン」から、時代ニーズを読み解く
ではクラウンエステートの詳細だが、“エステート”は一般的にステーションワゴンのことを表す。アウディの“アバント”やBMWの“ツーリング”などと同義語だ。ただ、このクルマはセダンをベースにしていない。通常エステートはセダンを活用しリアのバルクヘッドを取っ払いトランク部分をカーゴにするが、このクルマはそうではないのだ。プラットフォームを共有したのは他の2つのモデルで、全高1,625mmは、実はクラウンクロスオーバーよりも高くなる。


全長4,930㎜×全幅1,880㎜×全高1,625㎜。価格はESTATE RS 8,100,000円、ESTATE Z 6,350,000円。


ディスプレイは視線移動を最小限にとどめるデザインを採用。
全高を高くしたのには理由がある。マーケティング的に言えば背の低いステーションワゴンは売れてなく、マーケットニーズも車高の高さを必要としているからだ。また、物理的にセダンのプラットフォームを使えなかったのも大きく関係する。FCV(燃料電池車)では水素タンクが、HEV(ハイブリッド車)ではバッテリーがリアシート後方に設置され、カーゴを広げることが出来なかった。
よって、クラウンエステートはこれまでのステーションワゴンとは違うカタチとなった。まぁ、まったく異なるコンセプトで生まれたのだからそれもアリだろう。いい意味で我々を裏切ってくれればそれはそれで楽しい。実際クラウンエステートのプラグインハイブリッドに試乗してそれを感じた。パッケージングは優れていてキャビンは広くカーゴも大きい。また、高速道路を使った走行ではいつまで経ってもエンジンがかからずEV走行し続けた。つまり、プラグインハイブリッドとしての機能は十分。モーターをこれだけ高効率に使えれば燃費は大いに期待できる。
そんな4つのモデルを有するクラウンだが、現行型は16代目ということを知識として覚えておくといいかもしれない。初代は1955年で、今年ちょうど70周年を迎える。それを考えるとクラウンはまさに日本の自動車史のメインストリームにあると思う。では17代目はどうなるのか。今後の展開もまた興味が募る。
九島辰也 Tatsuya Kushima
モータージャーナリスト兼コラムニスト。現在、サーフィン専門誌「NALU」のメディアサイト編集長、メディアビジネスプロデューサーを担当。これまで多くのメンズ誌、ゴルフ誌、自動車誌、エアライン機内誌などの編集長を経験している。メディア活動以外では2024-2025日本カーオブザイヤー選考委員、(社)日本葉巻協会会員、日本ボートオブザイヤー選考委員、メンズゴルフウェア「The Duke`s Golf」のクリエイティブディレクターを務めている。
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