「光る君へ」言いたい放題レヴュー

Lounge

Premium Salon

「光る君へ」言いたい放題レヴュー

2024.5.27

「光る君へ #21 旅立ち」定子さまの枕元に届けるから枕草子?清少納言・敗者への美学とレクイエム!

そうきたか!
ききょうが定子さまの枕元に届けるから「枕草子」?



今週のお当番はN子です。第21回「旅立ち」はもう、これに尽きる!「枕草子」成立の新説が大河ドラマでぶちあがったのですよ!

 

先週、伊周と隆家への流罪が決まり、定子さまは二条邸へと下がり、まさかの髪を落として突然の出家騒ぎ。それを受けて今週ですよ。不幸のどん底に突き落とされている定子さまをおなぐさめしたいがどうしたら……と思案しているききょうに、四季の美しさを書くことをまひろが勧め、書き始めたのが「枕草子」となる……というところまでは想像がついていました。

 

「春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山やまぎは、すこし明あかりて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる」と、したためられた第一稿が、落胆して臥せっている定子さまの枕元に!そっとお届けしているではありませんか! なるほどそうきたのか!だから「枕草子」なんだな!と。





実際には、なぜこの随筆が「枕草子」と名付けられているのかは諸説あり、本当のところはわかっていません。

 

 

でも今回の描き方、とても納得いくではないですか! 清少納言という優れた観察眼と筆力を持つ女性によって、移り行く四季の美しさと、過ぎ去っていった楽しかったあの頃のことを草紙の中に閉じ込めておくのです。定子さまは、それをいつでも取り出して、思い出の中に浸ることができるのです。

 

 

臥せっていた定子さまが、少しずつ「枕草子」に目を通していく様子も描かれていました。清少納言の一節一節に、なぐさめられたことでしょう。ききょうさんの愛が込められた敗者への、そして失われていくものへの美しいレクイエムが、定子さまの枕元に届けられるから「枕草子」という、この新解釈には、N子は感服いたしました!


「枕草子」は失われていくものへのレクイエムだなあと思ったとき、谷崎潤一郎の小説「細雪」が脳裏をよぎりました。「細雪」にも、そういう意図が執筆の動機のひとつにあったと思っています。

 

 

谷崎は、3番目の夫人・松子とその姉妹の生活を愛していました。ときに優雅に、ときに意地悪な視点で生々しく描いています。第二次世界大戦によって、この美しい上方の上流階級の女性たちの生活様式が近いうちに失われてしまうだろうという予感のもと、すべてを残したいという意図は絶対にあったはずです。なぜならこんな些末なことまで?と思うような、生活や風俗のあれこれが描かれているのです。そして後にも先にも、谷崎はこんな長編は書いていません。

 

 

「細雪」の中に失われた当時の生活様式が閉じ込められているなあと、読むたびに思います。なので、そんな意図があって「枕草子」も書かれたのだという描き方に、納得してしまったのです。



さて、では「源氏物語」はどうやって書き始められていくと、「光る君へ」は描いていくのでしょうか。私は「枕草子」のような、鎮魂の想いも含まれていると思っています。今現在、この「光る君へ」は、「源氏物語」のエピソードゼロを毎週見ているようなものなのですが、まひろさんはきっと、直秀のように無残な最期を遂げたり、伊周のように自身のおごりによって去っていく人たち、運命に翻弄された人々を、フィクションとしてまとめていくという意図も含まれるのでは、と思っています。

 

 

忘却にまかせない、覚えておく、というのは大切な、ひとつの供養のかたちですから。




伊周の見事なダメ男っぷりと
定子さまの肝の座り方

 

しかし今週の伊周、相変わらず覚悟が決まらないというか、醜態を見せていました。「栄花物語」にも、伊周は心幼き人、と書かれているそうです。その通りでした!太宰府に流されることが決まっているのに、いつまでもグズグズとして逃げ回っています。出家したとかウソもつくし、母上と一緒に太宰府に向かうところ引き離され、牛車ではなく、馬で向かうように言い渡されて嘆いたりと、ひとつも男らしいところはありませんでした。

 

 

その点、定子さまの達観、いえ、諦念ぶりは対照的でしたね。もう髪もおろしてしまったし、袈裟もかけていて、ザ・出家スタイル。検非違使の実資たちが二条邸に乗り込み、伊周をとらえるときも表情ひとつ変えません。兄上のダメさ加減にほとほとあきれていたことでしょう。こうなったからには、逃げても仕方ないのですから。本当にお気の毒な定子さまです。



ちゃっかりとぶっちゃける倫子さま
道長も詮子さまも図星!

 

ところで前回の詮子さま呪詛騒ぎ。先週M男さんは、倫子さんが黒幕だと言っていましたね。私は詮子さまの自作自演だと思っていました。そして案の定、今週、倫子さまが詮子さまと道長に、義父さまも仮病がお上手だったと聞いていますオホホホと、真正面からぶっちゃけて、やっぱり!詮子さまが伊周たちをはめる気マンマンでしたことだったのですよね!そして、空気読んでるようで読まない倫子さまの強さに驚かされました。でも詮子さまも負けていないのでどっちもどっちでしょうか。




会えない時間が愛育てるのさ!
10年の月日が変えたもの、変わらなかったもの

 

 

もうすぐ越前へと赴くというとき、まひろさんたら道長にお手紙を書き、あの廃屋である六条邸でのデートシーンがありました。本音を語るのに10年の月日が必要だったのか……そして10年間もお互いへの愛情を温存できるものなのか……。でもふたりともとても素直に気持ちを話していました。まひろさんは、今度は越前で本当に生まれ変わるんだ、って宣言しちゃってましたね。そのあとラブラブしていましたが。

 

 

脚本家の大石静さんは、来週から本格的に始まる越前編のテーマは「絶対に離れられない2人」だとある取材に答えていました。都から遠く離れても「絶対に離れられない2人の関係性を表した象徴的な時間」だそうです。会えない時間が愛育てるのさ~♪ って郷ひろみの歌みたいな展開になるのでしたら、来週からも期待です!






「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。

Lounge

Premium Salon

「光る君へ」言いたい放題レヴュー

Premium Salon

ページの先頭へ

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。