東京駅八重洲北口を出ると目の前に現れる、スモールラグジュアリーホテル「ホテル龍名館東京」。ここは、2012年から9年連続ミシュランガイドで2つ星を獲得し、日経トレンディ「2012年ホテルランキング」のビジネスクラス部類では全国1位を受賞している、まさに世界が認める名ホテルである。
ホテルのエントランスにある、かつての看板。
龍名館という名からもわかるように、その前身は旅館であった。
1899年(明治32年)、淡路町から神田駿河台の観音坂を上りきった日本橋室町に、江戸時代から続いた旧名倉屋旅館の分店「旅館龍名館本店」として開業したのがはじまり。当時、竹久夢二や川村曼舟、伊東深水など、著名な文人や芸術家たちが定宿として利用しており、作家幸田文の名著「流れる」にも描かれている。しかし、空襲によって呉服橋支店と本家の名倉旅館が焼失し、名倉旅館は廃業するが、龍名館は戦後に再起を果たす。
本店は1976年にビルへ建替え(現在は「ホテル龍名館お茶の水本店」)、「ホテル八重洲龍名館」は2009年に135室の「ホテル龍名館東京」へ建替えている。
15階にあるロビーラウンジ。
旅館のおもてなしの心は、
周辺の外資系ホテルとの差別化につながっている
「ホテル龍名館東京」はその立地からも多くの観光客やビジネスマン、外国人観光客が利用し、その多くがリピーター客である。コロナ前にはその稼働率が9割にものぼると言うのであるから、間違えなく人気ホテルと言えるだろう。外資系ホテルが多い東京駅周辺で人気ホテルになるのは容易くはないが、その人気の秘密はどこにあるのだろうか。
ホテル選びにおいて重要視されるのは、立地やインテリアセンスという方は多いだろう。短い滞在をいかに豊かなものにできるか、それを大きく左右するのはホテル選びともいえる。「ホテル龍名館東京」は、その圧倒的な利便性を誇る東京駅八重洲北口の目の前にあり、135室ある客室はどの空間も落ち着いた色調でまとめられたラグジュアリー感あるホテルではあるが、これだけでは人気ホテルになるのは難しいはずである。
70平米を超えるプレミアムスイートは全てが贅沢で、優雅な時間を過ごしたい方へおすすめしたい。
畳が敷かれた和室を備えた和洋室は外国人旅行客をはじめファミリーにも人気が高い。和洋室の中には茶室を併設した部屋もあるというので驚きである。
「ホテル龍名館東京」のホームページを見るとわかるが、その部屋タイプの豊富さには驚く。全135室でなんと12タイプの部屋が用意されている。スイート・デラックスツイン・和洋室・フォーラスダブル・スタンダード・コネクティングなど、旅の人数や目的によって部屋のタイプが自由に選べる柔軟性はまさに旅館的発想といえるだろう。4室ある和洋室は、和室に布団を敷くこともできることからファミリーや外国人に人気が高い。この和洋室には、旅館時代に鴨居として使われているオリジナルアートワークが装飾として使われているなど、和のエッセンスが感じられる。12タイプもあると、次はどの部屋を選ぼうかな、そんな楽しみも生まれてくる。
サービス面においてもやはり旅館の精神が宿っている。こだわりの日本茶や日本橋の老舗店のお茶菓子などがサービス、木目を多く使ったデザインなど、全てが旅の疲れを癒してくれる。またお客様のリクエストは全てデータ化され、次回の滞在時にはお客様の意向に沿うようにしているという。そんな小さな配慮や心配りこそ、また泊まりたいという思いへつながるのであろう。まさにこれこそが歴史と格式ある旅館の真髄といえるだろう。
宿泊客の心を掴む朝食「東京ブッフェ」
東京野菜を含むカラフルな野菜が豊富に並ぶ。
八王子産の卵「八王子」を使った卵焼きは人気メニューの一つ。
優しい味わいの朝食に心が和む。後ろのテーブルから「どれも全部おいしいね!」そんな声が聞こえてくる。
そして特筆すべきは朝食である。「ホテル龍名館東京」の15階にある、和食店「花ごよみ東京」で提供される朝食「東京ブッフェ」は、これを食べたいから宿泊すると言わしめるほどの人気である。希少と言われる色とりどりの東京産野菜がズラリと並び、それに加えて、焼き魚からお造り、惣菜など、月代わりに約40種の料理が並んでいる。もちろんその味わいは絶品。優しい味わいは目覚めたばかりの体に優しく染み渡っていく。朝の6時半からいただける「東京ブッフェ」は宿泊者でなくても利用することができるので足を運んでほしい。
「ホテル龍名館東京」には至る所に、伝統と格式の継承が感じられる、まさに心地よく癒される宿である。
何より〝さあ、今日も1日頑張ろう!〟そう思わせてくれるホテルだ。
東京都中央区八重洲1-3-22
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