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これを食べなきゃ人生ソンだよ

2023.11.21

食欲全開!マジで旨すぎるイタリアン 麻布十番の「ピアット ミツ」へGO!



上段からの物言いですみませんが、料理の上手い下手ってものがある。「ピアット ミツ」のシェフ・岡村光晃さんの料理を食べると、つくづくこの人は料理が上手いんだなあと思う。「デッケえガタイしてよぉ、作るもんは繊細極まりないぜ」といつも感心する。

 

 

さて、料理が上手いとは何だろうか。素材を選べる目であり、素材の声を聴けることである。「こいつをどんな風に調理してやったら、いちばん旨くなってくれるか」――、それが素材の声を聴くということだろう。生、蒸す、煮る、炙る、焼く、揚げる、――やり方は様々だ。さらにどの素材とどの素材を組み合わせ、それらを何でつなぐか……。そのすべての行程で料理人の感性が問われる。

 

 

岡村さんの料理は、その結果、食べる者の本能に訴えかけてくる。なぜなら、素材が持つポテンシャルに上増すものをガツンとぶつけてくるからだ。これとは逆で、こねくり回したような料理に出会うと、アタマで考えすぎずに素材へ回帰したほうがいいんじゃね?と言いたくなる。








岡本さんは「ピアット スズキ」の出身で、麻布十番の「トラットリア ケ・パッキア」の料理長を長年にわたって務めた人である。完成まで一年以上かけた「イタリア風牛モツ煮」や数々のパスタは絶品だった。そこを辞めて福岡に店を出したが、東京に戻った。「ピアット ミツ」は、L字のカウンターに8席しかないワンオペの店だ。料理している様子がすべて見られるところが楽しい。

 

 

さて、肝腎の料理である。何もかもが素晴らしかったが、とりあえず全部紹介しておく。










自家製フォカッチャ&グリッシーニ登場
のっけから食欲全開バリバリで望む

 

そもそも、最初に出てくる、トマトとオレガノで風味付けした自家製フォカッチャと、クリスピーなグリッシーニが旨いのだ。前菜の前に、思わず食べ尽くしてしまいそうになる。

 

 

初っ端は「メカジキのアグロドルチェ載せ」である。塩で締めた生のメカジキに、シチリアのドライトマトとケッパーのドレッシング、その上にシチリア産玉ねぎの酢漬け(アグロドルチェ)を載せたものだ。ドレッシングは最小限の量で効き目抜群、塩の具合も最高、その上に玉ねぎの甘酸っぱさがかぶさって絶妙なコンビネーションをもたらす。夏に来たときには、ハモのフリットにアグロドルチェを組み合わせていた。その発想が素晴らしい。

 






「メカジキのアグロドルチェ載せ」 「メカジキのアグロドルチェ載せ」

「メカジキのアグロドルチェ載せ」





手が止まらぬ!
巨大ポルチーニのフリットの旨さに仰天

 

 

続いて驚かされたのが、「フレッシュポルチーニのフリット」だ。今年はポルチーニの季節が一カ月間ぐらいだそうだが、これだけ巨大な生ポルチーニに出会えたのは、僥倖としか言いようがない。松茸もフライがいちばん旨いと思うが、このポルチーニも、噛めばキノコの汁があふれ出てくる。名産地のエミリア・ロマーニャ州じゃあるまいし、日本でこれに出会えるとは、なんちゅうシアワセ!

 

 

次が、「サワラのソテー、ペーストジェノベーゼ」である。生で食べられるほど新鮮なサワラをジャストにソテーし、それにジェノベーゼを合わせたらマズイはずがない。このソテーだが、生とのギリギリの線まで攻めた火の入れ方が凄い。カリッと焼いた皮と血合いと脂身がまた旨いのである。




「フレッシュポルチーニのフリット」 「フレッシュポルチーニのフリット」

どうですこの大きさ。ポルチーニ茸丸ごとに食らいつく僥倖。揚げ物の醍醐味はありながら、油っぽくはない。野生と洗練ギリギリのせめぎ合いの結晶。





海鮮攻撃は続く。「アワビのオーブン焼き」である。この店で食べるアワビは、いつもめちゃくちゃに柔らかい。聞けば、「鮑を白ワイン、日本酒、オイルで炊く」のだそうだ。普通のイタリア料理人ならば、ワインだけで炊いてしまうところだが、それだと酸味が出てしまうという。今回はパセリのバターソースを合わせるときたもんだ。気分はエスカルゴみたいな感じね。アワビの身の下にはプリッとしたキモがしっかりと眠っていて、それがねっとり濃厚な味わいを醸し出す。うん、華やかなシャルドネが進む~。脱帽です。
この人、こんなに魚料理が上手だったのかというのは、前の店ではよく分からなかったことだ。現在はワンオペの「お任せコース」のみで、マックス8人にサーブしているからこそ、分かることとも言える。

 

 

聞くところによると、シェフはあるとき、すきやばし次郎に行って魚というものに目覚めた。長男の小野禎一氏と仲が良く、魚についてアドバイスをもらっているらしい。魚に向き合う本気度が、シェフの料理からは伝わってくる。





「アワビのオーブン焼き」 「アワビのオーブン焼き」

「アワビのオーブン焼き」も絶品。アワビの旨味と食感を生かしながら、仕事しっかり。絶妙~。





パスタ2品からの~
薩摩牛のローストで悶絶する

 

 

お待ちかねのパスタだが、なんとトリッパで作ってくれた。いいねー、トリッパ。極めて繊細な掃除を施してあって、内臓特有の臭みなんてどこにもなく、軽~いトマトソースがいい感じで、もちろん、乾麺の小麦の味もしっかり味わえる。感動的なほど旨かった! トリッパのパスタを出してくれる店って他にあるかね? ほとんどないだろな。そして、なんと、二連発でパスタである。自家製タリオリーニをタコのラグーであえたものだ。タコの甘味がいい。シェフは、旨いパスタを何種類も、ガツンと食べたい食いしん坊の気持ちがよく分かる人だ。

 

 

メインは「薩摩牛のロースト モストコットソース」。めったに手に入らない黒毛和牛のチャンピオン牛である。もも肉なのに、サシが程よく入っている。めちゃくちゃに甘い。それに、甘酸っぱいバルサミコに似たソースに黒トリュフである。これを完璧な布陣といわずして何と呼ぶ? 今宵の大団円を迎えるに最高のフィナーレである。バ・カ・ウ・マ。




トリッパのパスタ トリッパのパスタ

雑味ってなに?キレイなトリッパの旨味でパスタが進む。ワインが進む。




「薩摩牛のロースト モストコットソース」 「薩摩牛のロースト モストコットソース」

「薩摩牛のロースト モストコットソース」。どうしましょうこのお肉。脂の乗った薩摩牛なのですが、想像を絶する脂の入り具合にひとくち食べたら昇天。





世の評論家は猫も杓子(しゃくし)も「火入れ、火入れ」と姦(かしま)しいが、筆者も右にならって〝完璧な火入れ〟という言葉を発せざるを得ない(笑)。結局、魚も肉も、この人は最上の状態に仕上げてしまうのだ。ここまで手放しでホメると、この店とデキてんじゃねーのと勘繰る向きもあろうかと思う。筆者は覆面の一人の客にすぎない。匿名にしているのは、自由に論評したいからである。ゆえに、このコーナーでは、感じたことを正直に伝えるまでである。

 

さて、シェフはデザートまで手を抜かない。「メリンガータ」はメレンゲを使った菓子を意味する。レストラン仕様にして、メレンゲと生クリームと合わせた。上にかけたトリュフ風味のハチミツがまた見事だった。




「メリンガータ」 「メリンガータ」

なぬ?口腔に広がるのはトリュフの香り? 「秋だからトリュフのはちみつをかけてみました」シェフが微笑む。クリームとメレンゲのホワホワとした甘みと食感にトリュフの香りが参戦し、大満足の「メリンガータ」。





シェフの料理は、一言で言うと、繊細でありながらガツンと旨いものである。彼の心の師匠は、「ラ・ゴーラ」や「リストランテ・アモーレ」のシェフだった故・澤口知之氏だという。澤口の料理を知っている人は、なるほどと膝を打つだろう。澤口がつねづね口にしていたように、その料理の決め手は塩にあった。岡村さんの料理も塩がビシッと決まっていて、澤口を大いに忍ばせるものなのである。

 

 

一皿一皿にペアリングしてドバドバついでくれるワインの豪快さも嬉しい。ノンアルコールワインでも完全対応してくれるから、下戸の皆さんも安心だ。コースの中身はそのときどきに仕入れた魚や肉で変わるから、それも楽しみである。





ショップカード ショップカード

シェフの似顔絵が印象的なショップカード。明るく楽しい、シェフの人柄がよく表現されている。












ピアット ミツ

東京都元麻布1-7-12 Galle Motoazabu 7F
03-5442-9225(予約可能な時間帯12:00~17:30)

営業時間:18:00~
定休日:月曜日・他不定休
予算:12000円~ ワインペアリング代は別。

 

※各店の営業日/時間、値段は変わることがあるので要確認されたし。





「これを食べなきゃ人生ソンだよ」とは
うまものがあると聞けば西へ東へ駆けつけ食べまくる、令和のブリア・サバランか、はたまた古川ロッパの再来かと一部で噂される食べ歩き歴40年超の食い道楽な編集者・バッシーの抱腹絶倒のグルメエッセイ。

 

 



筆者プロフィール

 

食べ歩き歴40年超の食い道楽者・バッシー。日本国内はもちろんのこと、香港には自腹で定期的に中華を食べに行き、旨いもんのために、台湾、シンガポール、バンコク、ソウルにも出かける。某旅行誌編集長時代には、世界中、特にヨーロッパのミシュラン★付き店や、後のWorld Best50店を数多く訪ねる。「天香楼」(香港)の「蟹みそ餡かけ麺」を、食を愛するあらゆる人に食べさせたい。というか、この店の中華料理が世界一好き。別の洋物ベスト1を挙げれば、World Best50で1位になったことがあるスペイン・ジローナの「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」。あ~、もう一度行ってみたいモンじゃのお。

 



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