日本美のミュージアムホテルと称される「ホテル雅叙園東京」は、90年以上の伝統を受け継ぎ、2,500点もの日本画や美術工芸品に彩られた唯一無二のホテルである。その歴史を紐解くと、ミュージアムホテルと呼ばれる理由が見えてくる。
日本を代表する芸術家たちの作品が一堂に会した唯一無二のホテル
ホテル雅叙園東京は、目黒駅から目黒川方向へ歩いて約3分、緑に囲まれた地に佇む。「目黒雅叙園」という名の方が親しみのある人も少なくないかもしれないが、2017年にホテル雅叙園東京へリブランドし、客室をリニューアルをすることで宿泊部門を強化し、新たな歴史をスタートさせた。
また世界80カ国、520軒を超える独立系の小規模なラグジュアリーホテルだけで構成された「Small Luxury Hotels of the World(SLH)」、および世界的なラグジュアリーツーリズム・コンソーシアム「Serandipians®」にも加盟し、世界的にも高く評価をされている。
緑に囲まれたホテルエントランス。
エントランスから続く、アーチ型の回廊には江戸時代の浮世絵をモチーフとした木彫板が飾られている。
このホテルの大きな特徴の一つがホテルの至る所に見られる、豪華絢爛な芸術品の数々だ。それらはホテルに入った瞬間から惜しみなく私たちを感動の渦に引き込んでいく。しかしなぜホテルにこんなに美術品があるのだろうか? このホテルの歴史を紐解いていくとその背景が見えてきた。
多くの芸術家たちを支援し、日本の美術界を躍進させた創業者の存在
ホテル雅叙園東京の歴史は古く、90年以上前の1928年、創業者である細川力蔵氏が芝浦の自宅を改築して純日本式料亭「芝浦雅叙園」として開業したのがその始まりであった。1931年には目黒の地へ移転したことから名前を「目黒雅叙園」とし、さらには高級料亭から家族で気軽に楽しめる本格的な北京料理や日本料理を提供する料亭へと生まれ変わった。その際、より皆が楽しめる空間を作りたいとの創業者の想いから、一流の芸術家や当代随一の名工たちに装飾を依頼し、華やいだ空間を作らせると共に、彼らへ寝食を提供することで制作活動を支援していたとも聞く。
のちに、館内には美容室や写真室、挙式場、披露宴会場などを併設し、日本初の総合結婚式場としての機能も備え、日本のウエディングスタイルを確立したのだ。
1988年には隣接する目黒川の水害対策拡張工事に伴い休業を余儀なくされ、大規模な改修工事を実施し、膨大な数の美術品や建物の意匠を移築修復。1991年にリニューアルオープン、2017年のリブランドを経て、宿泊・レストラン・結婚式など、それぞれの特徴を存分に生かした、ここならでは空間をつくりあげている。
ホテル庭園の美しい風景。
芸術家の世界観を楽しみながら舌鼓を打つ至福
料亭からスタートしたという歴史を持つだけあって、日本料理、中国料理、イタリア料理など7つの上質なレストラン・カフェが並ぶ。
メインダイニングである中国料理「旬遊紀」(しゅんゆうき)は、“食医同源”の想いを込め、健康的な食を目指し、東京発の滋味深い中国料理を提供している。ここで紹介したいのは、芸術家の名前が付けられた美しい個室の数々である。文化勲章受章者・竪山南風(かたやまなんぷう)が手掛けた壁画など豪華絢爛な装飾が施された「南風」と美人画の大家、益田玉城(ますだぎょくじょう)の「美人花笠踊の図」に包まれた個室「玉城」はジョサイア・コンドル設計。旧目黒雅叙園から移築した特別個室であり、一見の価値がある。
個室「玉城」には現存する最古と言われる回転テーブルがある。
また、茅葺屋根一軒家のレストラン日本料理「渡風亭」(とふうてい)にも8つの個室が点在しており、こちらも素晴らしい。池上秀畝(いけがみしゅうほ)による四季の花と七十七羽の鳥が天井や欄間に描かれた個室「秀畝」や、浮世絵師であり日本画家「尾竹竹坡(おたけちくは)」が、壁・天井に施された螺鈿細工の原図を手掛けた「竹坡」など、精巧な職人技を堪能できる個室がある。食事はもちろん、ここに身を置くだけで幸せな気持ちになれる特別な空間である。
茶室に見立てた、オールスイートルームの気品ある空間
ホテルの豪華絢爛で重厚感ある雰囲気とは異なり、客室はシンプルモダンな落ち着いた空間が広がっている。6階から最上階の8階にある客室は全60室。それらすべてにスチームサウナとジェットバスが完備され、80 ㎡以上のスイートルームになっている。客室タイプはエグゼクティブスイート、ジャパニーズ、ジャパニーズモダンなどタイプあり、どの客室もジャパニーズセンスを加えた落ち着いたしつらえだ。
また、8階にはエグゼクティブラウンジは宿泊者のみが利用ができる特別な空間もある。
宿泊者だけがアクセス可能なエグゼクティブラウンジ「桜花」。
絶対的な信頼と品格。結婚式場としての人気の高さ
ホテル雅叙園東京と言えば結婚式をイメージする人は多いであろう。23の宴会施設の中でも、注目すべきは創業当時の正面玄関を移築・再現したと言う和室宴会場だ。大きなエントランススペースに入った瞬間から、そこは別世界だ。壁面・天井・柱などに描かれた絵画や螺鈿細工、彫刻など、日本が誇る見事な芸術家たちによる作品に包まれる。この気分が高揚する雰囲気の中で結婚式ができるのは新郎新婦のみならず、参加者にとっても忘れられない時間になるはずだ。
和室宴会場玄関。天井・欄間は江戸時代の年中行事と大名行列が極彩色で彫刻されている。
東京都指定有形文化財「百段階段」の階段廊下は今後の繁栄を願って一段足りない99段である。ここにも美しい芸術が施されている。
また、1935(昭和10)年に旧目黒雅叙園3号館として建てられ、ホテル内に現存する唯一の木造建築、東京都指定有形文化財「百段階段」もよく知られている建物の一つ。傾斜地に建設されたことから7部屋の会場を階段廊下がつなぐように設計された。宴会場として使われていた当時の様子がうかがえるようで心を満たす場所だ。それぞれの部屋には芸術家たちの作品が多く残されており、定期的に行われている企画展では宿泊者以外にも公開をしている。
さらに和室宴会場ロビーの畳で行われるモーニングヨガ(水・金曜日 7時30分~8時30分 祝日は除く)も誰でも参加することができる。
雅叙園アートツアー(月・火・木曜日9時~10時30分 祝日は除く)は宿泊者向けではあるが、豪華絢爛な美術品の数々をスタッフが解説付きで案内してくれるなど、ミュージアムホテルの魅力に触れる機会もある。
ここでは書き尽くせないほどの魅力があるホテルなので、ここに身を置いてその贅沢な空間を満喫していただきたい。
東京都目黒区下目黒1-8-1
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