世界各地で存在感を高めている「1 Hotels」。土地ごとの自然や文化を取り込みながら、サステナビリティを美しさや心地よさへと昇華する独自のスタイルは、世界の1 Hotelsを巡ることそのものを旅の目的にしたくなるほどの魅力を持つ。2026年3月、その日本初進出となる「1 Hotel Tokyo」が東京・赤坂に誕生した。ここにあるのは、豪華さを積み重ねるだけではない、これまでとは異なるラグジュアリーの価値観だ。
世界で支持される「1 Hotels」、ついに東京に誕生
2015年にマイアミとニューヨークで開業して以来、アメリカ国内をはじめ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどへ展開してきた。スターウッド ホテルズのCEOを務め、W Hotelsの創業者としても知られるバリー・スタンリヒト氏が創設した、サステナブル・ラグジュアリーを掲げるホテルブランドである。その根底にあるのが、「1 World――この地球はたったひとつ」という考え方。自然を守ることと、上質で心地よい滞在は両立できる。その思想を建築、デザイン、食、サービスのすべてに落とし込んでいる。
日本初進出となる「1 Hotel Tokyo」が、東京ワールドゲート赤坂内、赤坂トラストタワーの38階から43階に位置する。数多くの外資系ホテルが立ち並ぶ東京で、このホテルが提示するのは、豪華さを積み重ねるだけではない、新しい豊かさのかたちだ。
赤坂の空に浮かぶ、緑のホテル
赤坂の街を歩き、1階のエントランスへ足を踏み入れる。石や植物がつくる景色に迎えられ、まだロビーへ上がる前から「1 Hotel Tokyo」の世界観は始まっている。
1階エントランスから「1 Hotel Tokyo」の世界観がはじまる。
エレベーターが38階に到着し、扉が開く。最初に目に飛び込んでくるのは、圧倒的な緑だ。ロビーには、苔や再生木材、大谷石を組み合わせた垂直型のボタニカルインスタレーション。空間デザインを手がけたのは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動する日本人デザイナー、相崎準氏率いる「Crème」だ。
38階のロビー。苔や再生木材、大谷石を取り入れたボタニカルインスタレーションがゲストを迎える。
ロビーだけでも300鉢を超え、客室なども含めると館内には1500を超える植物が配されている。数字だけを聞けば圧倒されるが、植物は「飾られている」というより、この場所そのものが緑の中に溶け込んでいるように感じる。
奥へ進むと、禅の思想に着想を得たラウンジと石庭が広がる。大きな窓の向こうには皇居外苑や東京タワー、東京のスカイライン。漆喰の質感、枯山水を現代的に解釈した意匠、ブランドのシグネチャーでもある大谷石の壁。木や石の手触り、空気に漂う心地よい香りまで含めて、五感が少しずつ都市の緊張から解放されていく。
禅の思想に着想を得たラウンジ。大きな窓の向こうに東京のスカイラインが広がる。
ここで印象的なのは、自然やサステナビリティが“付加価値”として添えられているのではなく、ラグジュアリーそのものを形づくっていることだ。華美な装飾や過剰なサービスではなく、自然素材の心地よさ、静けさ、美しい眺望、そして地球への負荷を抑える選択。そのすべてが、ひとつの上質な体験としてつながっている。自然を“眺める”のではなく、その中で過ごす。そんな感覚が、ここにはある。
ホテル建設時に使われていた木製の足場も、解体・加工され、客室の壁面を彩るパネルへと生まれ変わった。家具にも再生素材や天然木が積極的に使われている。日本の建築環境総合性能評価システム「CASBEE」でSランクを取得するなど、環境への配慮と美しさや快適性を切り離さずに考えている点も、このホテルを象徴している。
客室にも息づく、新しい豊かさが生み出す心地よさ
客室は全211室。そのうち24室がスイートで、3室のペントハウスも備える。室内にも「1 Hotels」の思想が細部まで息づいている。インテリアは自然を感じさせるアースカラーで統一され、随所に観葉植物が配されるなど、都会の中心にありながら自然の気配を身近に感じられる空間だ。
Skyline Lounge King
Hinata House King
Midori House Two Queen
Panoramic Tower 1Bedroom Suite
心地よさは、見た目だけではない。全室に浄水システムを備え、ペットボトルの使用を抑制したり、バスルームには、水の使用量を意識するように砂時計が置かれている。また、飲料用のグラスにはワインボトルをアップサイクルされるなど、室内には「1 hotels」の精神が宿っている。
また、クローゼットを開ければハンガーにメッセージが記され、アメニティには別の使い方を提案するアドバイスの遊び心もある。
こうした仕掛けは、決して堅苦しくない。部屋の中に散りばめられた小さな発見をひとつずつ見つけていくような楽しさがある。
さらに、不要になった衣類などをホテルに置いておくと、地域のNPO団体へ寄付できる「1 Less Thing」という取り組みも行っている。環境への配慮を“ホテル側が行うこと”だけで終わらせず、滞在するゲスト自身も自然な形で参加できるよう工夫されている。
日によって並ぶフルーツが変わる「Farm Stand」。
規格外などの理由で流通しにくいフルーツをゲストに提供する「Farm Stand」も展開。並ぶフルーツは日によって変わる。食材を無駄にしないことや地域とのつながりを、難しい説明ではなく、滞在中の何気ない体験を通して伝えてくれる。
客室にはヨガマットやローラーも備えられ、窓の外に広がる景色を眺めながら身体を整えることもできる。サステナブルだからといって、何かを我慢するわけではない。むしろ余計なものを削ぎ落とすことで、素材の心地よさや眺望、静けさがいっそう際立っていく。
東京の味覚を、NiNiで楽しむ
その思想は、ダイニングにも続いている。四季折々の食材と地域の恵みを生かし、ミニマルウェイストを意識しながら、季節や土地の風味を丁寧に引き出していく。
シグネチャーレストラン「NiNi」。南仏リヴィエラと日本の四季の出会いを表現する。
シグネチャーレストラン「NiNi(ニニ)」が表現するのは、南仏リヴィエラと日本の四季の出会い。店名には“2つの海岸、2つの文化、2つのリズム”という意味が込められている。さらに、ホテルが位置する赤坂2丁目17-22という住所の「22」も、“ニニ”につながっているという遊び心もある。
ヘッドシェフのニコ・ポリカーピオ氏は、プロヴァンスのハーブやオリーブオイルと、東京近郊の若手農家や再生農地を活用する生産者から届く野菜を組み合わせる。都市農業を支援する「東京 NEO-FARMERS!」のネットワークも活用し、土地とのつながりを一皿に映し出している。「とにかく美味しいものだけを追求したい」というニコシェフの熱い思いとセンスが光る料理は、季節ごとに表情を変え、新たなメニューの開発にも余念がない。
食材によっては、木炭のみを熱源とするチャコールオーブンを使用。素材を強く焼き切るのではなく、香ばしさをまとわせながら、その持ち味を丁寧に引き出す。パスタはすべて手作りだ。
いい食材に出会うとニコシェフは新たなメニューを生み出さずにはいられないと話す。
タジマ和牛 トマホークステーキ
トマトソースのスパゲッティ。パスタは全て手作りしている。
ホタテのロースト。
ホテルダイニングと聞くと少し敷居が高く感じられるかもしれないが、NiNiが目指すのは日常使いできる存在。メニューや雰囲気、価格にも親しみやすさを持たせている。華美な演出を重ねるのではなく、季節の素材そのものをきちんとおいしく食べる。その姿勢は、サステナビリティを“正しさ”として押し出すのではなく、味わいや居心地のよさへと変換しているように思う。
季節のアフタヌーンティー。オリジナルの木箱にスイーツとセイボリーを美しく収める。
季節のアフタヌーンティーも見逃せない。エグゼクティブペストリーシェフの郷治文武氏とポリカーピオ氏が手がけ、オリジナルの木箱にスイーツとセイボリーを美しく収める。
写真のアフタヌーンティーは、2026年11月16日から12月25日まで、1 Hotel Tokyoのホリデーシーズンを祝う「La Belle Vie Afternoon Tea ~フェスティブアフタヌーンティー~」が提供される。
ロビーラウンジ&バー「Spotted Stone」。
同じ38階にあるロビーラウンジ&バー「Spotted Stone(スポッテッド ストーン)」では、日本のジン文化にフォーカス。50種以上のジャパニーズ・クラフトジンを揃え、好みのボタニカルやベルモットを選びながら自分だけの一杯を仕上げる「シグネチャー・マティーニ・リチュアル」も楽しめる。
昼間、緑と自然光に包まれていたホテルは、夜になるとまた違った表情を見せる。東京の灯りを眺めながら過ごしていると、自然と都市という、一見相反するものがこのホテルでは心地よく共存していることに気づく。
さらに「Neighbors Café(ネイバーズカフェ)」では、植物を中心としたヘルシーなメニューやコーヒー、ティーを提供。ホテルゲストだけでなく、街で暮らす人にも開かれた存在だ。旅先のホテルでありながら、その土地の日常とゆるやかにつながっている。その距離感もまた、「1 Hotel Tokyo」らしい。
心と身体をほどき、本当の豊かさを考える
心身を整えるウェルネスも、ここでは日常の延長線上にある。「バンフォード ウェルネス スパ」では、日本と西洋の伝統を融合したホリスティックトリートメントを提供。5室のプライベートルームとカップルスイート、リラクゼーションスペース、ハマムルームを備え、京都産の竹のツールと緑茶オイルを使う「ジャパニーズ バンブー マッサージ」など、土地の文化に着想を得たメニューも用意されている。
「バンフォード ウェルネス スパ」のトリートメントルーム。
自然光が満ちるインドアプール。東京の中心で心と身体をゆっくりとリセットできる。
24時間利用できるフィットネスエリア「The Field House」には、トレーニング設備を完備。イベントスペースではヨガなど各ウェルネスアクティビティも開催されている。自然光が満ちるインドアプールの先には植栽に囲まれたデッキが広がり、東京の中心にいながら、心と身体をゆっくりとリセットできる。
「1 Hotel Tokyo」では、イベントを「Happenings(ハプニングズ)」と呼び、ロビー横の黒板にスケジュールが記されている。金継ぎやカリグラフィー、抹茶をテーマにした企画、サウンドバスなど、宿泊者以外も参加できる毎月変わるプログラムを通じて、ホテルと地域、人と人をつないでいる。
「サステナブル」という言葉からは、少しストイックなものを想像するかもしれない。しかし、ここにあるのはむしろその逆だ。緑に包まれ、心地よい香りにほっとする。地産地消のおいしい料理を味わい、東京の景色を眺め、スパやプールで身体をほぐす。気負うことなく、その一つひとつが心地よく、安らぎにつながっていく。そして、その延長線上に環境への配慮がある。
ラグジュアリーとは、豪華なものを重ねることなのか。それとも、たくさんのものを持つことなのか。「1 Hotel Tokyo」に滞在すると、その答えが少し違って見えてくる。美しく、快適であること。そして、地球に負担をかけないこと。その両立こそが、これからの豊かさなのかもしれない。
ホテルを後にして、再び赤坂の街へ戻る。ビルが並び、人が行き交う景色は何も変わらない。しかし「1 Hotel Tokyo」で過ごした時間が教えてくれたことは、その後の景色さえも少し変えてくれるように感じる。
東京都港区赤坂2-17-22
Text by Yuko Taniguchi
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