文=バッシー
今回はみんな大好きカレーライス 東京のベスト5だぜ。
神田の「トプカ」、新宿の「モンスナック」、神田の「ボンディ」、上野の「デリー」、渋谷の「ムルギー」の5軒を紹介する。
この国の人は一年のうちで、どれだけのカレーライスを食べるのだろう。と考えてしまうほど、日本人は家庭でも外でも、まー、よく食うよな。
外食で特に目立つのは、店にもよるが、カレー屋におけるおっさん率だ。一人でやってきては、カレー屋に蝟集する。その光景は、そこに混じるのに気後れするほどだ(笑)。
ま、それは冗談だが、今回はおっさんたち(もちろん女子も子供も)が、それほど好きなカレーライス店を探訪してみたい。
とはいえ、東京のカレーは百花繚乱の呈を成す。今回は、日本人が作り白米で食べるカレーライスに限定することにした。キーマカレーもはずした。もちろん、日本で食べているカレーのようなものはインド本国にはない。町中華が中国料理とは違うのと同様に、カレーライスも日本独自のものである。
先にお断わりしておきたいのだが、筆者はカレーの専門家ではないし、また、東京中を食べつくしたわけでもない。概して、ドロッとした欧風カレーよりも、シャバシャバ系が好みだと思っていたが、どちらも同等にイケることが分かった。
今回も、数多の人気店を回った。そこで解ったことがある。小生は比較的若め~中年の人たちがやっているスパイスカレーってやつが、ほぼほぼ腑に落ちない。
インドで修業した云々の店も多く、誰もが独自のスパイス使いに精魂を傾けている。懸命なのはもちろん立派なことだが、料理としての「旨み」が置き去りにされているように思う。小生はインド本国で(日本なら一括りにされる)
今、流行っている店は明らかにインスタ映えを狙ってはいないか。そして、その多くが旨みに乏しいカレーを作っていることにおったまげた。超人気店を4軒ほど回って、もう勘弁してくれと思った。それでも客がパンパンに入っていることにも二重にたまげた。
エラそうな物言いをしてしまったが、以上も以下も、あくまでもジジイの一見解として参考にしてもらえたら幸いである。
自信たっぷりの名店「トプカ」
優しいけど、味に奥行きがある
神田須田町に昔からあるカレーの名店だ。なにしろ店名が「トプカ」。筆者は、イスタンブールのトプカピ宮殿でも関係するのかと思っていたが、「トップ・クオリティ・オブ・カリー」の略なのである。その自信は大したもんだ。
ここのカレーは印度カリーもしくは欧風カリー(当店はカリーと呼ぶ)で、あるいはその両者の盛り合わせセットを頼むことができる楽しい店だ。
欧風カリーはよく炒めた玉ねぎに20種類以上のスパイスと鶏スープを加えて12時間以上も煮込んでいる。印度カリーはシナモン、カルダモン、クミンなどで香りと辛さを引き立てる。
HPを見ると凄いことが書いてある。
「2種類とも手を抜いておりません!」
「どのメニューも全部同じルーを使っているカレー屋は、お客様を馬鹿にしていると思います」。
うひゃー、ケンカ売ってるぜ。こりゃあ、大変だ。
ゆえに、当店のカレーは、注文があってから、一皿一皿、フライパンで調理する。具によって全てのルーを使い分けているのだそうだ。そりゃ、インド人にとっては基本中の基本のことよね。
単品はキマカリーやハヤシライスも含めて18種、盛り合わせは、A牛すじカリー&印度ポークカリー、Bマトンカリー&印度ポークカリー、Cキマカリー&印度ポークカリー、Dバターチキンカリー&印度ポークカリー、Eバターチキン&牛すじカリーの5種がある。迷った末に選んだのはEである。
「トプカ」のカレーは”印度カリー”もしくは”欧風カリー”で盛り合わせセットを頼むことができる。
色の違う2種類の湖を、峰続きの白い山が分け隔てたかのようだ。写真で言えば、手前が牛すじ、向こう側がバターチキンである。欧風と印度の双方を楽しめる。
牛すじカリーは、辛くはなく優しい味わいだ。玉ねぎの甘い味、ワインの風味とバターのコクがある。牛すじは形状をわずかに残す程度で咀嚼しやすい。しっかりと煮込まれたためだろう。
バターチキンは大きめのチキンとジャガイモがゴロンと入っているが、バターを濃厚に感じさせる。とはいえ、インド人の作るバターチキンよりもスパイスもバターも少ないのではないか。粘度もこちらが上で、かなり優しい味わいだ。
優しいとは言え、スパイスの多様さ、味の奥行きと広がり方は見事で、カレーを食す喜びに浸れるものだ。小生は辛味に耐性があるのでまったく平気だが、同じカレーを食べていた隣の兄ちゃんは汗をダラダラと流していた。きっとスパイスに反応しているのだろう。
ご飯はかなり硬めに炊いてある。シャバシャバ系ではないので、ご飯が余りぎみになる。カレーだけ増量できると嬉しいのだが。
カリー専門店「トプカ」の入口
カリー専門店 トプカ
東京都千代田区神田須田町1-11
竹内ビル1F
℡03-3255-0707
(月~金)11:00~15:30、17:30~22:30
(土・日・祝)11:30~18:00
インド風ポークカリー 1300円
純野菜カリー 1250円
盛り合わせA 牛すじカリー&インドポークカリー 1750円
盛り合わせE 牛すじカリー&バターチキン 1900円
「モンスナック」は〝おっさんパラダイス″
この値段でこのクオリティは凄い
懐かしい店だぜ。新宿紀伊國屋書店の地下である。この地下街には生スパゲッティ屋の「JINJIN」があったりして、学生時代からよく通ったもんだ。
さて、「モンスナック」は「元祖サラサラカレー」を謳う店として、とても有名だ。創業は昭和39年と古い。ビル自体の耐震工事で休業したのち改装工事を終えて、2024年に再開したことで多くのファンが歓喜した
中はすっかりモダンで、極めて清潔な店に生まれ変わった。チリひとつ落ちていない。何となく、カレー屋ってのは、スパイス臭が壁にこびれつき、薄汚れていることが許されるイメージがあるが、ここはピッカピカだ。もちろん、店内で一から作っていないこともあるが、まずはそこに感動するだろう。
次に例によって、右も左もおっさんだらけなことに驚く。22席あって、女子はたった1人だ。この〝おっさんパラダイス″に侵入する女子の勇気も称えておきたい(笑)。
小生は「玉子カレー」にコロッケのトッピングを頼んだ。ベースとなるのは豚バラを煮込んだポークカレーで、そこにゆで卵を載せたものだ。玉子カレーだけなら800円という激安ぶりにも頭が下がる。
元祖サラサラカレー「モンスナック」の”玉子カレー”にコロッケのトッピング。
出てくるスピードが凄い。その「シャバシャバ感」も凄い。トロミは10%ぐらいかねえ。ブイヨンをベースにしているため、ほぼスープカレーか?ってなぐらいだ。そして、酸味の強い独特の風味だ。鼻からチャツネがツーンと抜けていく。これを白メシにまぶしていく楽しさよ。
もちろん酸味だけではない。辛味は控え目で、玉ねぎの甘さを時おり感じる。ブイヨンが元だから旨みも十分だ。「カレーは飲み物」と喝破した御仁が昔いたが、まさにそんな感じ。とにかくサラサラなので、ご飯にまんべんなく絡められる点がいいのだ。豚ロースの肉塊は、スプーンで簡単にほぐせるほど柔らかい。
牛肉コロッケも揚げたてで、ジュジュッと熱々で良い。真っ赤な福神漬けが旨い。緑のキュウリ漬けはしょっぱいだけだね。
中毒性があることは間違いないのよね。
チキンカレーも鶏唐揚カレーも旨そうじゃ。次回はどちらかだな。ちなみに、素材によってルーは変えているそうだ。
行列は必至だが、立ち食いそば屋みたいに回転率はすこぶるいいから心配はいらない。いや、今さらながらに素晴らしい名店だと思う。ちなみに新宿野村ビル店もある。
「モンスナック」の入口
モンスナック
東京都新宿区新宿3-17-7 紀伊國屋ビルB1F
(月~金)11:00~21:15、(日・祝)11:00~21:00
休業日:12月30~1月2日
玉子カレー 800円
カツカレー 1000円
コロッケカレー 850円
「欧風カレー ボンディ 神田小川町店」
ホッと安心する旨さは不変だ
なんだ、今さらここかよと言われそうだが、旨いものは旨いのだから、仕方がない。
今回、参考にしたものの一つに某グルメ雑誌のカレー特集があるのだが、そのラインナップには散々な目にあった。新規開拓は雑誌の使命であることは分かるのだが、目新らしさを優先して、首を傾げたくなる店を紹介していたら本末転倒というものだろう。
そういうスパイスカレーが続いていたときに、「ボンディ」を味わってホッとしたのである。
そうだよね~、旨みがなきゃダメだよね~、フムフムと頷きながら掻き込んだ。
「ボンディ」人気No.1の”チキンカレー”はフランス仕込みの深い旨みが特徴。
誰もが知っている「第1回神田カレーグランプリ グランプリ」受賞店である。もう何十年もひたすら同じ味を維持しているのは、やはり偉大なことだ。それでいて、本店などは呆れるほどの長蛇の列で、2時間待ちは当たり前ってなもんだ。
「ボンディ」のカレーの特徴は、何といってもフルーツの甘みと、フォンがもたらす味のコクというか、深い旨みにある。さすがはフランス仕込みと言える。
1968年にフランスに渡った初代・村田氏の説明によれば、フランス料理店でバイトをして、ソースというものの凄味に開眼したとか。彼のカレーは、フレンチのブラウンソースをベースに、数多くのスパイスを加えたものだ。
その特徴は、
「・乳製品をふんだんに使い、まろやかさとこくを醸し出しています。・リンゴを主体とし、その他の果物とタマネギなどの野菜をたっぷりのバターで長時間炒め、さらに赤ワインで煮詰め、フルーツと野菜のチャツネと呼ばれるジャムを作り、そこへさらにバター、レッドペッパーなどの辛みを加えていきます」
だからこそ、ソースというかルーは、なめらかで多様な深みがあるのだ。インド料理とはアプローチがまったく違う。小生が頼んだ人気No.1のチキンカレーにしても、ゴロンとしたチキンはスパイスに漬け込んだものをパリッと焼き上げただけで煮込んでいない。香ばしくて、そこがいい。
ちなみに、ルーのみ大盛りにしたのだが、やはりご飯が少し残ってしまった。欧風カレーの場合には、これがあるんだよね。エビカレーとかアサリカレーもさぞかし旨いに違いない。デザートの「なめらかプリン」ってやつを食べたかったが、こっちの支店にはなかった。ザンネン。
欧風カレー 「ボンディ」 神田小川町店の入口
欧風カレー ボンディ 神田小川町店
東京都千代田区神田小川町3-9 AS ONE 神田小川町2F
℡050-5571-0421
(月~金・祝前日・祝後日)11:00~15:00、17:00~21:00
(土・日・祝)11:00~21:00
チキンカレー 1700円
ビーフカレー 1700円
ポークカレー 1700円
大盛り(ソースのみ大盛りも同額) 200円
「デリー上野店」、ここをハズしたら
カレーファンの皆さんに怒られる
60余年の歴史を誇る、「東京のカレーと言えば、決まり!」ってな店だ。まー、ここはハズせないってことで。珍しいんだが、この店はインド・パキスタン料理を掲げているんだよね。犬猿の仲の国名が2つ並ぶのは不思議だが、商社マンだった創業者が戦前に研究したのは、インド、パキスタン、スリランカのカレーなんだって。
まずは名物の「カシミールカレー」ですな。意図的に黒くしたカレーで、色彩と風味はカラメルによるものだ。超シャバシャバ、というかほとんどスープである。とろみは一切ないという突き詰め方だ。
これは店が「Strong Hot」と表示するぐらい辛い。「蒙古タンメン中本」のような単一な辛さではなく、多様なスパイスによる辛さは強烈だ。だが、辛いだけではなく、辛みの奥にタマネギやカラメルの複雑な甘味や苦味が広がる。コクが深い。
さらに、ツヤツヤのライスが見事で、カレーの超スパイシーに対して、ライスが甘みをもたらす。ライスは今回回ったどの店よりも格段に旨い。すごいぜ、このライスは!
よって総合的に見て、これはカレーにおける一種の到達点とも言えるのではないか。
辛みには滅多に反応しない筆者だが、側頭部にタラリと汗が流れてきた。唇はもちろんビリビリである。胃袋までスパイスが効いている。ゆえに、辛いものに敏感な人には絶対にお勧めできない代物だ。たぶん、苦痛にしかならない。
だが、世の中には辛い物好きが多いらしく、「Very Hotで」とさらに辛いものを頼む客が満席のうちで3人もいた。すげえな。お宅らの舌、どうなってんの? そんなの食ってたら、胃とか食道とか壊すで(笑)。
食べ終わって30分ほど散歩してから、いちばんマイルドな「バターチキンカレー」を食べに戻った。相変わらず、アホやな、ワシ。店員も不思議な顔をしとった(笑)。
マイルドだが味わい深い「デリー」の”バターチキンカレー”
これは子どもでも行けるほどマイルドだ。しかし、マイルドは上辺のもので、やはり上級者用のカレーだ。カシューナッツの甘味と香ばしさ、トマトの酸味、そして薔薇のトゲのような辛味のスパイスがチラリと潜んでいる。うむ、実に味わい深い。これもまことに素晴らしい。
辛味も旨みも味わいたい人は、「インドカレー Hot ★★★」がいいんでしょうな。
「デリー」の入口
デリー上野店
東京都文京区湯島3-42-2
℡03-3831-7311
11:50~21:30(年中無休)
カシミールカレー(辛味度★★★★★)1350円
バターチキン(マイルド) 1500円
インドカレー(辛味度★★★) 1230円
ナスのピクルス 210円
ラッシー 550円
一口で旨ッ!となる
「印度料理 ムルギー」は偉大な店
昭和26年、渋谷道玄坂の百軒店商店街に創業した。白米がそそり立つカリーで有名な店である。ここも意外性のなさに、「なんだよ!」と言われそうだが、旨い順番から選べばハズすわけにはいかない。
初代が開店したときはミャンマー(ビルマ)のカリーだったようだが、現在はインドと日本の要素も入り込んでいる。メニューにあるサラダの「ガドガド」はインドネシア語だし、「ハヤシカリー」は日本語だから、料理の国籍は混沌としてますな。
頼んだのは店が一押しの「玉子入りムルギーカリー」で、チョモランマのごとき白米、麓に横たわる漆黒のカリー、ゆで卵の輪切り、その上にケチャップが一筋、
チョモランマのごとき白米が特徴の「ムルギー」の一押し”玉子入りムルギーカリー”
一口食べただけで、「むむっ、これは旨い!」と感じるほど旨みが強い。今回紹介した5軒の中では、「ボンディ」に次いで旨みが深い。チキンと野菜と果物を1週間ほど煮込んでいるそうだ。そこに10種以上のスパイスを加えている。ローストした玉ねぎも感じられる。
なにしろ、かなりシャバシャバだ。チキンはほとんど煮崩れていて細かい繊維になっている。辛みは程よい感じで苦味もあるが、とにかくコクが芳醇で、舌が喜びに打ち震える。辛味を緩和するゆで卵と、ケチャップの甘味もバランスがとてもいい。
付け合わせの黄色い坪漬け、福神漬けと紅ショウガを混ぜたものがカリーによく合う。紅ショウガというのは他のどこにもないが、これはなかなか良いアイデアだ。
飲むように流し込んだあとは、「あー、旨いもの食ったぜ~」という充実感に満たされた。しかも、また裏を返したくなる。ちなみに、辛口、大辛と辛さをリクエストできる。
「ムルギー」の入口
印度料理 ムルギー
東京都渋谷区道玄坂2-19-2
℡03-3461-8809
(月・水・木)11:30~15:00、17:00~21:00
(火)17:00~21:00
(土・日)11:30~15:00
定休日:金・祝日
玉子入りムルギーカリー 1300円
ムルギーカリー 1250円
ハヤシカリー 1450円
辛口 50円
大辛 100円
大盛 400円
「これを食べなきゃ人生ソンだよ」とは
うまいものがあると聞けば西へ東へ駆けつけ食べまくる、令和のブリア・サバランか、はたまた古川ロッパの再来かと一部で噂される食べ歩き歴40年超の食い道楽な編集者・バッシーの抱腹絶倒のグルメエッセイ。
筆者プロフィール
食べ歩き歴40年超の食い道楽者・バッシー。日本国内はもちろんのこと、香港には自腹で定期的に中華を食べに行き、旨いもんのために、台湾、シンガポール、バンコク、ソウルにも出かける。某旅行誌編集長時代には、世界中、特にヨーロッパのミシュラン★付き店や、後のWorld Best50店を数多く訪ねる。「天香楼」(香港)の「蟹みそ餡かけ麺」を、食を愛するあらゆる人に食べさせたい。というか、この店の中華料理が世界一好き。別の洋物ベスト1を挙げれば、World Best50で1位になったことがあるスペイン・ジローナの「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」。あ~、もう一度行ってみたいモンじゃのお。
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