銀座4丁目の交差点、銀座のランドマークとして知られる和光本店(SEIKO HOUSE)の地階フロアが改装され、「アーツアンドカルチャー」として、7月20日にオープンしたのをご存じですか?
「和光」は、1932年に渡辺仁建築工務所により設計された建物。ネオ・ルネサンス様式の意匠と時計塔を有した外観は、銀座の名所として日本人なら知らない人はいないと思います。ただその立派さゆえに、店内に入ったことがない、どんなものが売っているのかわからない、という方は意外と沢山いらっしゃるような気がします。
新たに「アーツアンドカルチャー」と名付けられた地階は、単なるお買いものの場ではなく、文化と人々の交流の場と位置付けられました。
和光のヘリテージや豊かな日本文化を活性化するための文化の発信地として、洗練された品々や刺激的なプログラムを通じ、現代の生活に多様な美意識と感性、唯一無二の体験を提供していくそうです。
和光地階のフロア中央。時計の文字盤をイメージした霧島杉の回転什器が設置されています
今回地階フロアの空間デザインは杉本博司氏と、榊田倫之氏が主宰する新素材研究所が担当しました。地階に入ってまず感じたのは豊かな木の香り。地下鉄の入り口から入ってすぐ、銀座の真ん中にいることを忘れてしまいます。
杉本博司さんみずから、さまざまなしつらえについて説明してくださいました。このインスタレーションにはお寺で使われていた古材なども用いているそう。新素材研究所らしい作品だと思います。杉本博司氏は、1948年東京生まれの現代美術作家。現代美術の世界では、恐らく日本人で最も世界に知られたアーティストの一人です。
新素材研究所は、杉本博司氏と榊田倫之氏によって、2008年に設立された建築設計事務所です。古代や中世、近世に用いられた素材や技法を研究し、それらの現代における再解釈と再興に取り組んでいます。
今回、和光というテーマを、新素材研究所がどのように解釈するのか、私は興味津々だったのですが、リニューアルされた地下を見て、とても新鮮に映りました。
リニューアルのコンセプトは「時の舞台」。そして、新素研が提示した空間デザインのコンセプトは「舞台と回廊」。中央には時計の針に見立てた巨大な回転什器があり、折に触れてディスプレイが変わるそう。売場を回遊できるように木格子に囲われた回廊があります。霧島杉や魚梁瀬杉、京都の町家石や唐紙など日本ならではの素材をふんだんに使っているそうで、和の自然素材と意匠を現代の様式に昇華しており、それがとても自然で、心和ませてくれる空間になっていると思います。思わず深呼吸をしたくなるような清浄さと、温かみを感じます。
「時とつながるよろこび」と「日本らしさの探求」手に取ってみたい品揃えの数々
今回のリニューアルのために、和光が取り揃えた品々もユニークでした。フランスのジュエリーデザイナー「シャルロット シェネ」のアイテムは特に目を引きました。彼女の曲線を多用したミニマルなデザインはそのままに、日本の真珠を使った和光とコラボレーションしたアイテムは手に取ってみたいと思うものでした。
また、唐紙を現代にモダナイズする工房「かみ添」のレターセットも和光とのコラボレーションアイテム。上質な和紙の質感と唐草模様が美しく、自分用にほしい!ギフトアイテムにも最適!と編集部で大人気となりました。
ウェアやバッグなども充実しています。3Dコンピューターニッティングの技術とデザイン性の高さ、環境への配慮などで注目されるニットウェアの「CFCL」、和の様式を巧みに造形したバッグの「BYYO」など、このリニューアルのために揃えられたそうそうたるブランドを見て、和光が大切にしている「クラフトマンシップ」「JAPAN」「SDGs」を軸に、未来につながるストーリーを発信するという、志しの高さを感じました。
今後も、ものづくりの視点を大切に、国内外のクリエイターの方々と日本の美しさや文化を表現していくそうです。
様々なクリエイターとのコラボレーション
書籍も置かれ、銀座から文化を伝えるという意志を感じます。
写真左から、株式会社和光 代表取締役社長 庭崎紀代子氏、セイコーグループ株式会社 代表取締役会長兼グループCEO兼グループCCO 服部真二氏、杉本博司氏、榊田倫之氏
銀座の顔・和光のウインドウディスプレイも必見
地階フロアのオープンと合わせ、中央ウインドウは、美術家であり、自然布の蒐集家・研究家として知られる吉田真一郎氏による、自身が蒐集し続けている古代の白い麻布を用いたインスタレーションを展開していました。ミニマルでシンプルな表現が斬新です。
日本では、古来より白は清浄で潔白、穢れを払うとされており、麻の白さが神事に供用されてきました。和光はこの白を光の色と捉え、数百年の時を経た多様な白の表現で銀座を照らし、新たな「時の舞台」の幕開けを祝います。
この地階リニューアルを機に、銀座・和光に足を踏み入れてはいかが?
島村美緒 Mio Shimamura
2017年からプレミアムジャパンの代表、そして編集長として、
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