「ディアジオ ワールドクラス」はバーテンダーの世界的な大会である。毎年、約60カ国から約25000名を超えるバーデンダーたちが腕を競い合う。
2011年大会で世界一の称号を手にしたのが、現在パレスホテル東京の7代目チーフバーテンダーを務める大竹学氏である。そして、2022年の大会で優勝し世界一となったのが、チェコスロバキア出身のエイドリアン・ミハルチック氏だ。
ちなみにミハルチック氏は、現在ノルウェーのオスロのバー「Pier 42」を拠点にしている。2021年から23年まで連続して、ノルウェー最優秀バーデンダー賞を受賞している。
2022年大会には審査員として参加していた大竹氏によれば、「彼はバーテンダーとして求められるものを全て兼ね備えており、優勝するだろうと思いました」と言う。そんな彼であるが、「日本には私が尊敬する素晴らしいバーテンダーがたくさんいる」そうだ。
チェコスロバキア出身のエイドリアン・ミハルチック氏。
2人が考案したカクテル。
さて、7月3日夜、パレスホテル東京6階のラウンジバー プリヴェにて、今年、本世界大会が東京で開催されたのを機に来日したミハルチック氏と、大竹氏の夢の共演が実現した。
この日のために2人が考案したカクテルはそれぞれが3種ずつの計6種。テーマは3つで、1番目が〝最上質の日本〟を表現する「Experience the Heart of Japan」、2番目が夏を感じる「Summer Season」で、これらに関しては2人が異なるジンとウィスキーを用いた。3番目だけがベースのスピリッツは共通で、テキーラの中で最も美味しいとされるウルトラプレミアムテキーラ「ドン・フリオ 1942」の魅力を引き出すことが与えられたテーマである。
6種類をすべて説明することは割愛するが、大竹氏の1作目「THE HEART OF JAPAN」は、ジンのタンカレー№10をベースにして、なんと、そこに日本の四季を込めた。春が桜のベルモット、夏が玉露、秋が山椒、冬が柚子、最後にライムを加えた繊細極まりないカクテルだった。3作目の氷を使わないで作る常温のテキーラ・カクテルも(「ドン・フリオ 1942は常温がいちばん美味しいから」by大竹氏)、とても斬新なものだったが。
ミハルチック氏の2杯目「DATSUZOKU」はウィスキーとシャンパンを合わせるという珍しいものだ。そこにイチゴの果汁、メイプルシロップ、梅酒、レモンを加えた。ウィスキーがベースなのに、赤色が実に綺麗なところも印象的だ。日本の食材に寄せてくれた作品のテイストは複雑精妙の極致であった。
パレスホテル東京の7代目チーフバーテンダーを務める大竹学氏。
大竹氏によれば、バーに来るゲストの5割がカクテルを楽しむという。欧米人は比較的苦味と甘味を好み、日本人は酸味と甘味を好む、という具合に違いがあるそうだ。この晩、2人が作った6種のカクテルは、どちらかと言えば日本人に寄せたもののように感じられた。1杯の中に広がる世界は、例えばフランス料理の1皿にも匹敵する。いや、1杯に込められたテイストはあまりにも多様で、その点では料理を超えるかもしれない。いずれにしても、口中で様々な味覚が刺激される実に繊細で楽しい体験であることは間違いない。
ミハルチック氏はノルウェーに帰国するが、大竹氏が考案した3種のカクテルは、7月10日より1カ月間はパレスホテル東京のメインバー ロイヤル バーで楽しむことができる。
パレスホテル東京
東京都千代田区丸の内1-1-1
℡03-3211-5211
石橋俊澄 Toshizumi Ishibashi
「クレア・トラベラー」「クレア」の元編集長。現在、フリーのエディター兼ライターであり、Premium Japan編集部コントリビューティングエディターとして活動している。
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