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「光る君へ」言いたい放題レヴュー

2024.12.7

まひろは燃え尽き症候群に。まさかの周明死す?大宰府は驚愕の展開の連続

光る君へ 第46回 「刀伊の入寇」あらすじ&今週も言いたい放題
まひろは完璧な燃え尽き症候群に。
周明と大陸へ渡り、義経伝説の先鞭となるかと思いきや、周明死す?の驚愕の展開



今週のお当番のM男です。今回も含め残すところ、あと3回。文字通り大詰めです。

 

後半の最大の山場である「望月の歌」と「道長の出家」が終わってしまったので、あとは最終回に向かってどう盛り上げていくか……。

 



そこで登場したのが「刀伊の入寇」。うーむ、M男、大学入試で日本史を選択したのですが、そんなの出てきたかしらん?「和寇」とか「元寇」なら覚えてるけど。

 

でも、「光る君へ」初の合戦シーン。素朴だけど、なかなか迫力ありました。

 


大宰府で出会うべくして出会った、まひろと周明



まひろと周明が大宰府で出会います。20年ぶりとのこと。20年間一度も使わなかった中国語が、さらっと出てくるなんて、まひろはやはり天才です。

 

周明と双寿丸も出会います。細かいことですが、この二人は、少し前の朝の連続テレビ小説「スカーレット」での親子ですね。



大宰府には隆家もいます。なんだか髭が少し変ですが、相変わらず豪放磊落で、まひろのことを、我が家を破滅に追いやった「源氏の物語」の書き手などと言い放ちます。まあ、当たらずとも遠からずで、まひろもばつが悪そうです。



それにしても、隆家も周明も、なんて察しがいいのでしょう。隆家は、周明とまひろがお互い憎からずと思っていることに気づきますし、周明は周明で、左大臣こと道長が今は太閤殿下と呼ばれ、しかもまひろの長年の想い人であることを、見抜きます。



一方で、まひろは大宰府に来ても少し醒めた感じです。それを吐露するのが、雨に降られた舟小屋での周明とのやりとり。さきほど、合戦シーンが面白かったと書きましたが、今回のクライマックスは、じつはこの舟小屋と、その少し前の倫子さまと赤染衛門との会話にほかなりません。

 



赤染衛門、かな書きの歴史書の大切さを力説



まずは赤染衛門から。まひろの先輩女房的なポジションだった彼女の存在意義が、ここで明らかになります。『栄華物語』の作者として、物語、いや正確に言えば歴史書の意義を主張するために、控えめながらもこれまでも何かにつけ登場していたんですね。



『栄華物語』の冒頭に登場する宇多天皇の御代は9世紀末。道長より100年も前のことです。「道長さまの栄華の物語を記録してね」と頼んだ倫子さまからしてみれば、100年も前から始まるのであれば、確かに遡り過ぎです。



でも、「かな文字で書かれた史書は初めてです」と力説する赤染衛門。その気迫に押され「もう 衛門の好きにしていいわ」と倫子さま。このところ、眉間に皺寄せの怖い表情が多かった倫子さまが、久しぶりに見せる、心からの笑顔です。二人の間で無邪気に遊んでいる猫も可愛らしい!!



実資の『小右記』や行成の『権記』は、事実を淡々と述べた漢字で書かれた歴史書です。かなで書かれた『栄華物語』は、脚色された部分や、誤った記述が散見されるものの、微妙な人間心理の記述もあり、文学作品としては価値ある存在とされています。


赤染衛門が作者かどうかは、歴史学的には確定していないそうです。でも、これまで終始冷静で安定路線だった赤染衛門が興奮気味に語るシーンは、なかなかぐっとくるものがありました。


『蜻蛉日記』に始まり、『枕草子』『和泉式部日記』『源氏物語』に続き、『栄華物語』の成立までカバーするとは。いわゆる、「平安女流文学」の流れを丹念に追うことが、今回の「光る君へ」のサブテーマだったのなぁということが、よくわかります。






まひろ、今や完璧な燃え尽き症候群に



そして舟小屋のシーンです。

「今はもう何を書く気力もない。私はもう終わってしまったの」と、胸の内を曝け出すまひろ。完全な燃え尽き症候群です。その症候群に、道長との関係がからむから余計根が深そうです。



意気揚々とかな文字の歴史書に取り掛かろうとする赤染衛門と、燃え尽きてしまったまひろ。その対比が鮮やかというか、残酷です。

 

「終わってしまったのに、それを認められないの」。この「終わってしまった」のには、物語りを紡ぐ気力が果てたことと、それに伴う道長との関係も終わってしまった、と言う気持ちも含まれています。


「まだ命があるんだ。これから違う生き方もできる」と周明。周明さんよ、全身全霊で創作に打ち込んできたクリエイターには、そういう優等生的というか、通り一遍の平凡なアドバイスは、なーんも効力ありませんよ。

 

あげくの果てに、俺の物語を書けだと? それはずうずうしいというもの。それとも口説いてるの?



物を書く人間の一人として、大石静さんは、ご自身の経験とも照らし合わせながら、この場面の脚本を、文字通り紡ぎ出したのでしょうね。素晴しいのヒトコに尽きます。まひろならずとも、泣けてきます。

 



胸の内を吐露したまひろと周明の間の距離が狭まり、やばい、これは密なる関係になってしまうかもと思った瞬間、ころんと音を立てて寝こける乙丸。ほんとうにいい味出してます。



もしかしたら狸寝入りの振りをして注意を引き、「乙丸もいますよ、二人だけではありませんよ」とアピールしたのかも。でも、このあと二人がどうなったかは、神のみぞ知るですな。



平安貴族は、合戦でも兜をつけず、烏帽子のままです



刀伊が攻めてきました。馬上の人となった隆家は、鎧は纏うものの、兜ではなく烏帽子です。他の人は兜を付けているのに、防具としては役立たない烏帽子のままなのは、彼が武者ではなく貴族なのだからでしょう。


ちなみに、刀伊の入稿は、調べてみると、船約50艘、およそ3000人で来襲した女真族系民族とされています。殺害された日本人は300人以上ですから、かなり深刻な出来事でした。戦闘も、ドラマでやってた、浜辺でちょこちょこという程度ではなく、もっと大がかりだったようです。



日本側が追撃するにあたり、隆家は「壱岐、対馬より先へ行くな。そこから先へ行くと他国に攻めることになる」と言います。


隆家すごい、国際感覚持ってるなぁ、でもホントかな、と疑ってしまいますが、wikiによると、どうやら本当みたいです。隆家の活躍によって食い止められた武力侵攻。かつて安部晴明が道長に、「隆家さまは貴方のお役に立ちます」と予言したのは、このことだったんですね。



手を取り合い、逃げ惑う二人。そこへ矢が



まひろと周明も戦闘に巻き込まれてしまいます。逃げ惑う二人。細かいことですが、この時に流れた音楽は、ちと違うのでは。



あの音楽は、まひろのもとへ道長が、あるいは道長のもとへまひろが駆け付けるときに流れる、「まひろと道長の愛のテーマ」のはず。いくら周明に手を引かれて二人で逃げるシーンとはいえ、使ってほしくなかったなあ。

 



そして衝撃のシーンです。周明の胸に矢がぶすりと。思わず「えっ!」と声が出ました。初回に、まひろの母が道兼に刺し殺された時と同じ類の衝撃です。


「大宰府へ戻ったら話したいことがある」と周明は言っていましたから、きっと「俺と一緒に宋へ行こう」と、真面目に言うんだろうなぁ。でも、周明と一緒に宋へ渡ってなんて、まるで義経がチンギス・ハーンになりました的な、トンデモ展開にはならないとは思っていましたが、まさか周明が死ぬとは。


都に戻ったまひろ。道長との再会はあるのでしょうか?



「刀伊の入寇」に、まひろが巻き込まれるなんて、よくぞ思いついたと、どこまでも羽ばたく大石さんの想像力に感服です。でも、単なる絵空事にならないのは、今回でも「なぜ物語を書いたか」という執筆動機と、その後のまひろの心の襞を丁寧に見つめているからです。



逆に言うと、あの舟小屋のシーンが無ければ、破天荒な空想歴史ドラマになってしまっていたかもしれません。と言いつつ、あとの2回は、なんでもあり、もうどんな展開が待っていようと、驚きません。



予告では、どうやらまひろは京都へ戻っているようです。道長と再び会うのでしょうか。だとしたら、やっぱり川の畔がいいな。


小津安二郎の『東京物語』に登場する老夫婦の熱海の場面のように、二人で流れる川を見ながら、しっとりとした会話が交わされたりしたら最高。そんなことを妄想するM男です。

 









































































































































































































































































































「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

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