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「光る君へ」言いたい放題レヴュー

2024.11.24

新解釈!「この世をば我が世とぞ思ふ……」道長のかの有名な歌は。まひろへの愛の歌だった!!??

光る君へ 第44回「望月の夜」あらすじ&今週も言いたい放題
新解釈!「この世をば我が世とぞ思ふ」の歌は、道長からまひろへの愛の告白だった!!??



今週のお当番M男です。かの有名な「この世をば……」の歌は、どんな場面で登場してくるのか。このことは、今年の放映が始まったときから、ずっと気になっていたことでした。



今まで一般的に解釈されてきた歌として登場するのか、それとも斬新な解釈があるのか。

結論からして、M男は大満足。いやぁ、さすが大石静さん、そう来たかと感服、大感動の神回でした。(「さすが大石さん」のフレーズ、このところ連発ですね)


帝はただオウム返し。「摂関政治」ってこういうことだったんだ。




眼も見えず、耳も遠くなった三条帝は譲位を余儀なくされ、ついに道長の孫である敦成が後一条天皇に即位します。摂政となった道長も御簾の内側に座り、後一条天皇を補佐するといえば聞こえはよいですが、思いのままに操ります。

 

幼き天皇の背後でささやく道長と、それをオウム返しに公卿に伝える帝。そうか、摂関政治というのは、こういうことだったのかと、一目瞭然で分かります。


摂政を辞した道長は、本当に不本意だった?



とはいうものの、道長は摂政の座を1年で息子の頼道に譲り、「大殿」とか「太閤」と呼ばれるようになります。

 

ドラマでは、譲るようにと、親友の公任に説得されたことがきっかけのように描かれていましたが、歴史考証の倉本一宏先生によると、「むしろ官職秩序から自由になった道長は、(中略)摂政頼道を上回る権力を行使し続けることに」なります。

 

不本意そうな道長でしたが、歴史的にはこちらが事実なのでしょう。でも、「不本意そう」なのが、ドラマとしては大切。これが後に繋がるのですから。


道長、またまた上から目線の超絶殺し文句




暮れの挨拶と称し、道長はまひろの局にやってきます。相変わらず、まひろは執筆中。宇治十帖は、どのあたりまで進んでいるのでしょう。

 

さてさて、この場面でまたもや、道長は、最初は大ボケをかましながら、最後には超絶殺し文句をさらりと言います。憎いね。

 

でも、じつはそれが望月の歌のシーンの伏線となっていきます。



まひろに摂政を辞することを告げ、「頼道様にあなたの思いは伝わっていますの?」と問われた道長は、「思い」が何のことか一瞬わかりません。まひろに「民を思いやる心です」と言われ、ようやく思い出す有り様。

 

まひろは、民を思う心で政(まつりごと)をすると誓った道長を慕い続けてきたのに、本当に大ボケです。

 

しかも、「たつたひとつの物語さえ、書き手の思うことは伝わりにくいのですから。仕方ありません」とまひろに苦渋の発言をさせてしまう。さらに「おまえの物語も、人の一生は空しいという物語ではないか。俺はそう読んだ」とまで、言い放つ。

 

確かに『源氏物語』はそうかもしれませんが、それを書き手に面と向かっていうなんて……。無神経なヤツだなぁ、まったく。



「ならば、お前だけは念じていておくれ」 またまた道長の殺し文句



「道長様の気持ちが頼道様にすぐに伝わらなくても、いずれ気づかれるやもしれません。そして次の代、次の代へ。私はそれを念じております」と前向きなまひろ。

 

すると道長は「ならばお前だけは念じていておくれ」と。

 

おいおい、これって前々回の宇治川の畔で放った「お前は俺より先に死んではならん」と同じ手法ではありませんか、道長さんよ。

 

上から目線の発言だけど、いわれた方がじーんときちゃうセリフ。二人の間にあった「思い」なんて忘れていたのに、本当にずるい道長です。そして、「はい」と力強く答えてしまうまひろの健気さに、泣けてきます。

 

前々回の宇治川といい、今回のこの場面といい、お互いに心は繋がっている、つまりソウルメイトだということを、二人は何度も再確認しています。こうしたお互いの想いの再確認が、着々と望月のシーンの伏線となっていきかす。


『漫画で学ぶ日本史』では、満面の小太り道長が満月を仰ぐ。それが定番



さて、問題の望月のシーン。『漫画で学ぶ日本史』などでは、やや太った道長が、扇を手に満面の笑顔で満月を仰ぎ、この歌を詠むシーンが定番です。M男もこれまではそう思ってきましたし、中学の社会でもそんな風に習った記憶が。

 

でも、今回の「光る君へ」で作りあげてきた道長像に、そんな通り一遍当の解釈は似合わないし、そもそもまひろがどう絡むかが、最大の注目でした。



これはお通夜? 目出度い宴席なのに、妙に暗い雰囲気が……



いや驚いたのなんの。宴席が妙に暗い。まるでお通夜です。公卿たちも嫌々列席しているみたい。華やかな雰囲気が少しもありませんし、かといって厳粛という雰囲気でもない。ひたすら暗く、沈鬱です。

 

そしていくら酒を飲んでも道長の憂さは晴れません。いろいろなことが「不本意」な道長ですから、公卿たちが杯を回している光景さえつまらなく思えるのか、目つきもメチャ悪い。

 

そしてやおら舞台に進み、例の歌をおもむろに詠み、居並ぶ公卿たちも実資に促され唱和します。この男性陣の声が低く、なんだかやはり不気味。



まひろとの間に思いが通じていれば、この世は我が世



ところが、まひろははっと気づきます。何に気づいたか。

 

ここからはM男の解釈ですが、この歌は自分に対して投げかけられた歌だと、まひろは気づいたのではないでしょうか。「望月の欠けたることも無しと思へば」とは、「まひろと自分との間の思いが通じている」ことを意味し、そうでありさえすれば、「この世をば我が世とぞ思う」つまり、自分の人生は本望である。

 

道長は大勢の前でまひろへの思いを吐露したのです。そう受け取ったまひろの瞳は一段と輝き、若き日に二人が結ばれたあの夜の月が一瞬浮かび、道長もキラキラと輝いたのではないでしょうか。

 

道長は道長で、老いは隠せぬものの、愛を告白した満足に満ちた微笑みを浮かべています。

 

かの有名な歌は、今回の大河ドラマにおいては、藤原家の栄華を高らかに誇る歌ではなく、紫式部への想いのたけを詠んだ歌だったのです。

 

どうでしょうか? M男の解釈は誤っているでしょうか? 全員が唱和しているシーンの時、画面の右隅にまひろがいて、そこにもぼんやりライトがあたっていましたね。

 

とてもとても素晴らしい演出だと思いました。ブラボーです。

 


もう、どんな展開でも驚きません。ひたすら楽しみです


月といえば、三条帝も衰弱した身体を横たえて月を眺めていました。

 

三条帝は百人一首に「心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな」という切ない歌を残した人です。同じ月を詠んだ歌でも、道長とは大違いですね。伊周とならび、今回のドラマではヒールでしたが、考えてみれば道長に翻弄された、不幸な帝でした。

 

残る回数も少なくなってきました。次回では道長は剃髪し、まひろは旅に?そしてなんと、越前編でほんの少しだけ出た、周明が出るみたいではありませんか。赤染衛門が『栄華物語」を執筆するというおまけまで。

 

前々回も書いたように、紫式部の没年が明確でない以上、どんな展開でもOK! 驚きはしません。楽しみにしてます。



















































































































































































































































































「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

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