日本のクラフトジン革命、その原点と現在
いま日本のクラフトジンが世界から注目を集めていることはよく知られていることだろう。そもそもジンといえば、イギリスやオランダの伝統的スピリッツという印象が強かった。ところが2010年代頃、日本の蒸留家たちの「日本らしさとは何か」をボタニカルで表現するという挑戦によって、日本のクラフトジンの市場は世界へと広がり、いまや国内には100を超えるクラフトジン蒸留所があるほどだ。
そんな中でもいち早く世界に認められたプレステージな日本のジンが京都蒸溜所の「季の美 京都ドライジン」である。2020年に、ペルノ・リカール社と資本提携した京都蒸溜所は、今年、京都府亀岡市に新たな生産拠点を築いた。今回はその蒸溜所を訪れる機会を得たので、そのこだわりと「季の美」の魅力を紹介しよう。
日本の美意識が生んだクラフトジンは、京都からはじめる
先にも述べたように、日本のクラフトジンが世界へ認知された背景には、ウイスキーや焼酎の蒸留技術を活かし、地域の柚子、玉露、山椒、桜葉、檜などを素材に取り入れた、香りや味わいに“日本の四季”を感じさせたことにある。そして、それらは新しいジャンルとして認識されているのである。
例えば北海道ではラベンダー、瀬戸内では柑橘、九州では桜島小みかんや黒糖など。それぞれの土地の気候や水質を反映し、“地域の風土を蓄えた味わい体験”へと日本のジンは進化をしている。
新設された蒸溜所にはギャラリーのように、歴史や写真などが飾られている。
「季の美 京都クラフトジン」は2014年に、ジン専用蒸溜所として京都・伏見に設立された京都蒸溜所からはじまった。「季の美」とは、“季節のうつろいに美を見出す”というまさに日本人の感性を表現した名であり、水、風土、そして職人文化が残る地の京都こそが蒸溜所に相応しい場所として、その地に誕生したのだ。
京都市内にある「季の美 House」では京都蒸溜所のさまざまなジンを味わうことができる。
その特徴はこだわりを持って吟味した11種のボタニカルにある。
蒸溜オペレーションマネージャーの遠藤光祐さんは「ジュニパーベリーを軸に、柚子、赤松、玉露、山椒、赤紫蘇、生姜など、日本ならではの素材を用いており、その多くは地元の京都産です。たとえば柚子は、蒸溜所の職員が手摘みをして、自分たちで皮を剥いています。それはどのくらいの厚さで皮を剥くのかへのこだわりがあるから機械では難しいんです」と語る。
蒸溜オペレーションマネージャーの遠藤光祐さん。
「季の美 京都ドライジン」に使われる11種類のボタニカルを6つのエレメントに分けて蒸溜したリキッド(非売品)。京都市内の「季の美 House」では、これらのエレメントを実際に試飲することができる。
そして特筆すべきは、それら素材を「礎・ベース」「柑・シトラス」「茶・ティー」「凛・ハーバル」「辛・スパイス」「芳・フルーティー&フローラル」の6エレメントに分けて、それぞれ別々に蒸溜した後にブレンドするという独自の手法にある。こうすることで、香りは重層的となり、それぞれの味わいのハーモニーが繊細に仕上がっていくのだと言う。
割り水には、名水の地・伏見の清酒「月の桂」製造蔵元である「増田徳兵衛商店」の仕込み水を使用。「マイルドな天然軟水のため、全体の口当たりを丸く整えている」とのことだ。
新蒸溜所「京都蒸溜所」の世界へ向けた新たな挑戦
2025年秋、「京都蒸溜所」は新たな章を迎えた。
京都市伏見区の蒸溜所から、自然豊かな環境に囲まれた新たな蒸溜拠点が開設された。長閑な風景の中に、突如現れる漆黒の建物は、「季の美」のボトルと同じ黒。施設内には「季の美 京都ドライジン」のパッケージに採用されている、KIRA KARACHO(雲母唐長)監修の文様が壁に施され、階段には「季の美」の歴史とともに、亀岡市の風景を描いたイラストなどがあり、遊び心が見え隠れしている。
豊かな自然に囲まれた亀岡市に新設された蒸溜所。
この施設の建設総投資額は約2500万ユーロ。生産能力は5倍以上へ拡張され、設備の自動化や環境配慮型の設計も導入された。世界のクラフトジンの蒸留所を訪ねている人に聞くと、ここまでの施設を持っている蒸留所は世界でも少ないと聞く。
京都蒸溜所 代表取締役の長井大幸さんは「既存の蒸溜所の生産量に限界を感じていたことから、新蒸溜所の候補地をかなり探し回り、この亀岡市にたどり着きました。京都市内からは車で20分ほどという利便性の高さに加え、亀岡市長はサステナブル対策に積極的な人。当社の考え方に近いことが大きな理由の1つです。蒸溜所で使用される電力は100%風力、水力、太陽光、そして地熱といった再生可能エネルギーです」。
さらに、この自然環境を活かして、新たなボタニカルの開発も視野に入れているとも聞く。亀岡の蒸溜所は単なる生産拡大だけではなく、“季の美 京都ドライジン”の新たな実験場にもなるようだ。
タンクが立ち並ぶ光景は圧巻。ベーススピリッツをはじめ、蒸溜後の各エレメント、さらにブレンドを経て完成したジンまでが貯蔵されている。
京都蒸溜所 代表取締役の長井大幸さん。
体験の場としての「季の美 House」
蒸溜所は一般には解放されていないが、京都・河原町にある「季の美」の魅力に触れることができる「季の美 House」は誰でも訪れることができるブランドホーム。
古民家を利用した「季の美 House」。
築100年以上の京町家を改装した空間にはショップやバーの他、ボタニカルの展示、製造工程の紹介、そして限定ジンのテイスティングが楽しめる会員向けの「ジンパレス」など、京都蒸溜所のこだわりやブランドの世界観が体感できる仕掛けがたくさんある。
さらにここでは12月中旬から毎週木曜にオリジナル「季の美」ボトルのラベルがつくれる京都クラフトセミナーがはじまる。
「季の美 House」の近くにある「堀金箔粉」の金箔を使って、200mlの「季の美」のラベルに金箔を貼る「金の美」ワークショップの他、「季の美」を使った水割りなどをいただくことができる内容だ。もちろん完成したマイ“金の美”は持って帰ることができる、思い出の体験ができるはずだ。
季の美の飲み比べやカクテルが楽しめる1階「季の美の間」。
2階には、ジンの歴史や〈季の美〉製法を学べる展示ルーム「展示の間」。
1階の奥には会員制ラウンジ「GIN PALACE (ジンパレス)」。
金の美ボトル体験や季の美カクテルを愉しめる京都クラフトセミナーは、テーブルチェックにて予約受付中。
日本のクラフトジンが世界的に注目されていることは日本人としても大変喜ばしいことである。
日本の素材や感性、美意識が詰まった「季の美」の世界観を多くの人に学び、そして体感して欲しいと願う。
季の美 House
京都市中京区河原町通二条上る清水町358
Text by Yuko Taniguchi
谷口優子 Yuko Taniguchi
Premium Japan編集部スタッフ
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