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編集部&PJフレンズのブログ

2025.11.14

『美味求真』100年前の名著が現代に甦る @八雲茶寮イベントレポート




ようやく心地よい秋の気配を感じさせた土曜日、100年前の1925年に出版され、当時のベストセラーとなった『美味求真(びみきゅうしん)』現代語訳版刊行を記念して開催されたイベントに参加するため、八雲茶寮へと出かけてきました。



今回のイベントは、前半に『美味求真』の現代語訳を手掛けた河田容英さんと、生物学者の福岡伸一さんのクロストーク、そして『美味求真』をモチーフにした料理とワインや日本酒を楽しむという趣向です。

八雲茶寮 八雲茶寮

秋の日、都立大学駅から約10分ほど歩くと、八雲茶寮の構えが見えてきました。



八雲茶寮 楳心果 八雲茶寮 楳心果

八雲茶寮 楳心果には、上生菓子などを買い求める人がひっきりなしに訪れます。

『美味求真』
大正時代に現れた、食文化の宇宙を記したベストセラー本



『美味求真』とは、大正14(1925)年に出版された、食文化について記された大著。食をテーマに、日本、中国、そして西洋文化や歴史へと横断し、そこに科学的、哲学的、芸術的な視点をも盛り込んだ、博覧強記の書です。著者の木下謙次郎は大分県出身の貴族院議員、衆議院議員を務めた政治家であると同時に、美食家としても知られていた人物だったそうです。


河田容英さんは、食への興味からあらゆる食に関する文献を渉猟していたときに、『美味求真』に出合ったと言います。なぜ現代語訳に取り掛かったかの理由をお聞きしました。


「『美味求真』は、食を通して、動植物の生態から文化・歴史・科学・倫理までをも見渡した、食研究の書として素晴らしい内容なのですが、文語体で書かれていることや、引用される漢文を読み下していく必要もあり、読みづらさがありました。自分自身がもっと理解を深めたいと思ったことが、現代語訳に取組んだひとつの理由でもあります」





生物学者 福岡伸一さんとのクロストーク

 


福岡伸一さんが『美味求真』の序文の一部を朗読することからクロストークが始まりました。福岡さんと河田さんが、著者の木下謙次郎の食文化への視点をさまざまな角度から、私たちに示してくれました。


河田容英さんと福岡伸一さん 河田容英さんと福岡伸一さん

河田容英さんと福岡伸一さんの対談の様子。生きることはロゴスだけでは語れない、ピュシスであることで循環していくなど、ゲストの知的好奇心を刺激。





「木下は、ロゴス(言語)とピュシス(自然)に着目した科学者であり、文学者。人間が万物の生物の頂点に立つのは、ロゴス化できたから。でも生きること、死ぬこと、食べること、実存的なことはロゴス化できない、ピュシスそのもの」と福岡さん。今年の読書界で取り上げられる本となるだろうと述べられました。



木下謙次郎へのオマージュにあふれた料理の数々


クロストークのあとは、八雲茶寮の総料理長 梅原陣之輔さんが『美味求真』をモチーフに作り上げた、おまかせ料理が供されました。


この日のペアリングは、大分の安心院葡萄酒工房のものが選ばれました。著者の木下謙次郎はじめ、現代語訳を手掛けた河田さん、料理長の梅原さんも大分県出身。大分の食にかかわる通人たちの木下へのオマージュを感じさせる、とても趣のあるものでした。


「斎庭稲穂」 甘酒 マンゲツモチ 「斎庭稲穂」 甘酒 マンゲツモチ

「斎庭稲穂」 甘酒 マンゲツモチから、お料理は始まります。マンゲツモチは、天皇陛下が皇居内で田植えをされる品種。自然な、やさしい甘みの甘酒でした。


「真是消得」 臼杵 ふぐ唐揚げ 卵巣糠漬け七味 「真是消得」 臼杵 ふぐ唐揚げ 卵巣糠漬け七味

「真是消得-死」 臼杵 ふぐ唐揚げ 卵巣糠漬け七味は、外はカリっと、中はふぐのふんわりと柔らかな身と、ふたつの食感を楽しみました。そのままでも美味しいのですが、卵巣糠漬け七味を付けるとピリッとした刺激が、また異なる味わいを教えてくれます。


「江戸の美食家」 鰆味噌柚庵焼き 蓮根餅 柚子あん 「江戸の美食家」 鰆味噌柚庵焼き 蓮根餅 柚子あん

「江戸の美食家」 鰆味噌柚庵焼き 蓮根餅 柚子あんは、味噌の甘みと柚子の程よい酸味と合わせて鰆を食します。甘さは日本の食にとって、特徴的なものなのかもしれない、とふと思ったり。ねっとりとした蓮根餅もよく合いました。


かめ煮 かめ煮

かめ煮は、伊勢神宮奉納米の御飯と一緒にいただきました。かめ煮は江戸風に、しっかりとした醤油の味付けが御飯にぴったりでした。


安心院葡萄酒工房 古屋浩二さん 安心院葡萄酒工房 古屋浩二さん

この日、すべての料理に合わせてワインや日本酒をセレクト、サーブしてくださったのは、安心院葡萄酒工房 古屋浩二さん。


食についての巨大な宇宙を記した知の巨人、木下謙次郎が残した大著『美味求真』。100年の時を超えて、古くなるどころか、現代の私たちに新鮮な視点を与えてくれるこの本の存在を知り、さっそく手に取ってみたくなりました。福岡伸一さんがおっしゃっていた通り、読書会の課題図書にして、語り合うのも面白そうです。


「現代語訳 美味求真」木下謙次郎(著)河田容英(訳)傍流堂刊 7,000 円+税 「現代語訳 美味求真」木下謙次郎(著)河田容英(訳)傍流堂刊 7,000 円+税

現代語訳 美味求真 木下謙次郎(著)河田容英(訳)傍流堂刊 7,000 円+税






中嶋千祥 Chisa Nakajima

編集NことPremium Japanの編集長ダイリ。1950~60年代の日本映画鑑賞とワインを飲むのが大好き。戦後の女性誌収集が趣味というちょいオタク。

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