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編集部&PJフレンズのブログ

2026.9.9

「青森屋 by 星野リゾート」で体感する、祭りの熱狂と温泉の静けさ。 青森を体感する旅

「みちのく祭りや」のショーの様子。










夜の街を、巨大なねぶたが進んでいく。

闇のなかに鮮やかな色彩が浮かび上がり、勇壮な表情をたたえた人形ねぶたが近づいてくる。「ラッセラー、ラッセラー」の掛け声に囃子の音が重なり、その後ろでは跳人(はねと)たちが力いっぱい跳ね踊る。

青森ねぶた祭を実際に目にして、まず感じたのは、「祭りを見る」という言葉では収まりきらないほどのエネルギーだった。

 

青森ねぶた祭は、毎年8月2日から7日に開催される。今回は、まさに祭りの真っただ中に青森を訪れる機会を得た。新幹線も飛行機もほぼ満席。全国から多くの人がこの祭りを目指してやって来ることを、青森へ向かう道中から実感した。

そんな旅の拠点となったのが、青森県三沢市にある「青森屋 by 星野リゾート」だ。

「のれそれ(青森の方言で“目一杯”の意味)青森~ひとものがたり~」をコンセプトに、祭りや方言、温泉、食、工芸など、青森の文化を滞在しながら体験できる温泉宿である。



かつて名馬の産地として知られた青森。公園を巡る馬車が毎朝運行している(予約制)。





22万坪の雄大な敷地を歩き、青森の景色を堪能する





東京から「青森屋 by 星野リゾート」へは、東北新幹線で八戸方面へ向かい、青い森鉄道に乗り換えて三沢駅へ。飛行機なら羽田空港から三沢空港へ向かい、空港から送迎バスで約20分だ。





奥に見えるのが「青森屋 by 星野リゾート」の宿泊棟。敷地内には大きな池がある。





到着してまず驚かされるのが、そのスケールである。

敷地面積は約22万坪。緑豊かな敷地の中央には大きな池があり、その近くには馬やポニーがいる牧場まである。館内だけで過ごすホテルというより、自然に囲まれた大きな公園のなかに泊まるような感覚に近い。

宿泊棟は本館・西館・東館の3棟、客室は全236室。温泉に入って終わりではなく、広い敷地や館内を歩きながら、さまざまな青森文化に出会える仕掛けがいくつも用意されている。

 



その中心となるのが、本館1階の「じゃわめぐ広場」だ。「じゃわめぐ」とは、青森の方言で「心が騒ぐ、ワクワクする」という意味。
エレベーターを降りると目の前に「五所川原立佞武多『かぐや』」が現れ、さっそく心がじゃわめぎ始める。

ほかにも「ヨッテマレ酒場」や「じゃわめぐ売店」「うるほひ横丁」などがあり、まるで昔ながらの祭りの縁日に迷い込んだような賑わいだ。食事をしたり、買い物をしたり、写真を撮ったり、一杯飲んだり・・・それぞれの楽しみ方ができる空間になっている。

ホテル内には多くの方言が使われた場所があり、またスタッフの方々の方言で話すのが聞こえてくる。青森の文化である方言を敢えてお客様に触れてもらう、これもおもてなしになっているのだ。

 

じゃわめぐ広場と西館をつなぐ通路は、季節によってしつらえが変わる。

私が訪れた夏には、約300個の金魚ねぷたが彩る「しがっこ金魚まつり」や「金魚ねぷた灯籠回廊」などが登場。9月から11月には、約300個のりんご灯籠が並ぶ「りんご灯篭回廊」へと姿を変える。

思わず足を止め、写真に収めたくなる。季節を変えてまた訪れたくなるのも、青森屋の楽しさのひとつだ。



「金魚ねぷた灯籠回廊」の様子。



ワークショップ ワークショップ

季節によってワークショップが開催されている。




わずか一室。「ねぶたの世界」に泊まる特別な客室





次に気になるのは、やはり客室だ。

青森屋には、わずか一室だけの特別室「青森ねぶたの間」がある。写真では見たことがあったが、今回は特別に室内を見学させてもらった。




主室にある、幅約3.2m、高さ約1.4mの天境立体ねぶた「東北の雄 阿弖流為(アテルイ)」。北方の守護神・毘沙門天(びしゃもんてん)の加護を得て、鬼神を従え奮闘する勇姿が表現されている。




中央にあるのは、主室のねぶた障子「津軽海峡 義経飛龍」。青森県や岩手県の一部では、源義経が奥州平泉の地より生き延び、きたを目指したと古くから伝えられており、義経が荒れ狂う津軽海峡を渡ろうとする場面である。



扉を開けた瞬間、思わず「これはすごい」と声が出る。

玄関で迎えてくれるのは、高さ約2メートルの「田村麿と妙見宮の鬼面」。さらに主室へ進むと、「東北の雄 阿弖流為」を表現した立体ねぶたが圧倒的な存在感を放っている。

第7代ねぶた名人・竹浪比呂央氏の協力によって制作された造形は、単なる客室装飾というより、部屋全体がひとつの作品のようだ。

しかも、その仕掛けは目立つ場所だけにとどまらない。

洗面台や浴室の桶など、何気なく使う場所にもねぶたのモチーフが潜み、インターホンからは「ラッセラー、ラッセラー」という祭りの掛け声まで聞こえてくる。

どこを見ても、ねぶた、ねぶた、ねぶた。

わずか一室だけに予約のハードルは高そうだが、この圧倒的な迫力に包まれて過ごす一夜は、忘れられない思い出になるに違いない。

これだけ賑やかな空間で、果たしてぐっすり眠れるのだろうか。そんなことまで少し気になってしまう。



寝室の天井にあるねぶた絵は、見る位置によって表情が変わる。主室から寝室を望むと、義経の勇壮な顔が立体的に浮かび上がって見える。



2026年誕生。「ほっこりんご和室」に見る、もうひとつの青森





2026年にリニューアルして誕生したのが、りんごをモチーフにした「ほっこりんご和室」である。

りんごのアーチやクッションなど、まず目に飛び込んでくるのは、思わず写真に収めたくなる愛らしいデザインだ。

けれど、この部屋の魅力は、「青森といえば、りんご」という分かりやすさだけではない。

たとえば、室内に置かれたりんごのオブジェには、豪雪によって折れてしまったりんごの木が使われている。また、木片や皮などを漉き込んだ「りんご和紙」も室内に取り入れられている。

雪国でりんごを育てること。豪雪とともに暮らすこと。そして、本来なら捨てられてしまう木を、新たな形で生かしていくこと。

そうした土地ならではの自然環境やりんご産業の背景を知ると、愛らしい客室の見え方も少し変わってくる。




2026年8月に宿泊がスタートした「ほっこりんご和室」は、全35室。




各部屋に置かれている、りんごの木から生まれた「ほっこりんご」のオブジェ。




ベッドボードには、りんごの木から生まれた和紙で作られた、りんごの花の壁掛け。



青森文化との出会いは、客室だけではない。

館内を歩いていると、「BUNACO」や「津軽金山焼」といった青森の工芸が、ごく自然に目に入ってくる。展示品として並べられているのではなく、照明や器、インテリアとして実際の空間に溶け込んでいるのだ。

「あ、この照明も青森のものだったんだ」。

そんな小さな発見をきっかけに、土地の工芸へ興味を広げていくのも、旅の楽しみ方のひとつだ。



忘れられない、しっとりとした湯の心地よさ



青森屋を訪れたら、時間を取ってゆっくり楽しみたいのが、自家源泉の温泉だ。

内湯は天井や壁、浴槽に青森ヒバがふんだんに使われ、足を踏み入れた瞬間から清々しい木の香りに包まれる。

泉質はアルカリ性単純温泉。湯に身体を沈めると、肌を包み込むようなやわらかな感触があり、湯上がりにも、しっとりとした心地よさが残る。



青森ヒバをふんだんに使った、木の香り豊かな内湯。



水の上に浮かんでいるかのような「浮湯」。



露天風呂には「浮湯」という名がつけられている。その名の通り、まるで池の上に浮かびながら湯に浸かっているような開放感がある。

冬(12月〜2月)には、ねぶたの山車と、ゲストが願い事を書いた小灯籠が浮湯の周りの池に浮かび、この時期にしか見られない幻想的な景色が広がる。その光景を想像しただけで、今度は雪の季節に訪れてみたくなる。

原稿を書いている今も、あのやわらかな湯の感触を思い出すと、もう一度浸かりたいという気持ちが湧いてくる。

それほど、印象に残る温泉だった。

 

青森には、朝早くから湯に入る文化もあるという。

前夜の賑やかさが嘘のように静かな朝。やわらかな朝の光のなかで入る温泉には、夜とはまた違う心地よさがある。宿泊するなら、ぜひ朝風呂も楽しみたい。ホテルから歩いて10分ほどのところには、宿泊者以外も利用できる「元湯」がある。時間に余裕があれば、温泉のはしごをしてみるのもいい。

 



青森の朝風呂文化を体験できる「元湯」。



伝統工芸品「津軽びいどろ」の職人の協力によって作られたオリジナルガラス。



祭りの熱気をサウナで味わう「青森ねぶたサウナ」



もうひとつ見逃せないのが、「青森ねぶたサウナ」である。

青森ヒバを使用した香り豊かなサウナ室。その正面に設えられているのは、第7代ねぶた名人・竹浪比呂央氏が主宰する「竹浪比呂央ねぶた研究所」が制作した、「龍王」を題材とするねぶただ。

サウナのなかにまでねぶたがあることに、まず驚かされる。

さらに室内には祭囃子が流れ、その盛り上がりに合わせてオートロウリュが行われる。

熱気に包まれながら、目の前には迫力あるねぶた。

静かに“ととのう”サウナとはひと味違う、青森屋ならではの高揚感がある。サウナ室の前には、地下水を汲み上げた水風呂も用意されている。

祭りの熱気をサウナで表現してしまうあたりも、なんとも粋である。




サウナ室正面のねぶたは、青森ねぶた祭でもよく用いられる「龍王」。水や雨を司る神として知られている。



サウナストーンは、ねぶたの武者や青森の夏の風物詩「金魚ねぷた」をモチーフにしている。


サウナ室の目の前には、地下水を汲み上げた水風呂がある。



湯上がりのお楽しみは、蛇口から注ぐりんごジュース



温泉から上がったあとも、ここだけの青森体験は続く。

じゃわめぐ広場にあるのが、りんごの木に設えられた「りんごジュースが出る蛇口」だ。蛇口をひねると、4種類のりんごをブレンドした冷たいりんごジュースが注がれる。

「蛇口からジュースが出てきたら」。

そんな子どもの頃の夢をそのまま形にしたような演出に、大人でもちょっと嬉しくなってしまう。

温泉で火照った身体に、冷たいりんごジュース。

こんな何気ないひとときにも、青森らしさがしっかりと詰まっている。



無料で楽しめる「りんごジュースが出る蛇口」。提供時間:8時〜12時/15時〜20時



夜は「みちのく祭りや」へ。青森四大祭りの熱気を体感




夜になったら、「みちのく祭りや」へ出かけてほしい。

ここでは、五所川原立佞武多、弘前ねぷたまつり、八戸三社大祭、青森ねぶた祭という、青森を代表する4つの祭りを題材にしたオリジナルショーが繰り広げられる。

会場には6名のねぶた師が手掛けた作品が並び、映像や照明、囃子とともに祭りの世界を体感できる。座席は予約制なので、滞在が決まったら早めに予定へ組み込んでおきたい。

そして驚かされたのが、舞台に立つ演者が、日中は調理や客室など、それぞれの仕事を担う青森屋のスタッフだということ。

普段の仕事をしながら練習を重ね、夜になると演者として舞台に立つ。

だからこそ、単なるエンターテインメントとは少し違う熱量を感じるのかもしれない。

聞けば、青森出身のスタッフも多く、自分たちの土地の文化を、自分たち自身で伝えていきたいという思いがあるそうだ。

館内で聞こえてくる方言も含め、青森屋ではスタッフ自身が青森文化の伝え手になっている。

ショーの最後には観客も参加し、会場全体がひとつになって盛り上がる。

青森の祭りを実際に訪れることができない季節でも、その熱気の一端を感じられるはずだ。

 

※2027年4月より、16時30分〜17時30分に公演時間が変更になる。


毎日21時〜22時に開催される「みちのく祭りや」は宿泊者向けで、全席完全予約制。


青森屋のオリジナルショー「青森四大祭りショー」。


弘前ねぷたまつり「筆とねぶた」。



会場入り口にある、ねぶた師・立田龍宝(たつたりゅうほう)氏がデザインを担当した8枚の木製ねぶたの切り絵。


本物の青森ねぶた祭へ。宿で知った文化がつながる瞬間


今回の滞在では、「青森屋 by 星野リゾート」が用意する「青森ねぶた祭観覧バスツアー」に参加し、祭りの会場へ向かった。

到着すると、沿道にはすでに多くの人が座り、祭りのスタートを今か今かと待ちわびている。

やがて遠くから、夜の闇に浮かび上がる巨大な人形ねぶたが見えてきた。

近づくにつれ、細部まで描き込まれた鮮やかな色彩や、立体的な身体の動きがはっきりと見えてくる。

「ラッセラー、ラッセラー」。

掛け声と囃子が響き、跳人たちが跳ねる。

その熱気に押されるように、沿道の観客からも「ラッセラー、ラッセラー」と声が上がる。

映像で見ていた祭りからは想像できなかったほどの迫力と一体感だ。

私自身、青森ねぶた祭を体験するのは今回が初めてだった。

これほどまでに会場全体がひとつになり、人の心を高揚させる祭りがあるのか。

久しぶりに夏祭りの熱気に身を置いたことで、どこか忘れていた日本の夏の記憶まで呼び起こされたような気がした。

人生で一度は見てほしい祭りだ、と言い切りたくなる。





そして、祭りを終えてホテルへ戻ったとき、館内にあるねぶたの意匠も、「ねぶたの間」も、サウナの「龍王」も、「みちのく祭りや」で感じたスタッフの熱気も。本物の祭りを知ったあとでは、それまでとは少し違って見えるのだ。

宿で文化に触れ、本物の祭りへ出かけ、再び宿へ戻る。
ホテルの空間も、ねぶた祭体験も全てが一つにつながり、青森という場所を丸ごと体験したような気持ちにすらなった。

 

 

朝食は、青森屋 by 星野リゾートの「のれそれ食堂」でいただく。朝夕ともにブッフェスタイルで、豊富な海産物が並び、思わず笑みがこぼれる。帆立ラーメンに、刺身をのせたごはん、新鮮な野菜の蒸し物など、朝から食欲が止まらない。


「のれそれ食堂」に入ると、左右に飲食スペースが広がっている。


新鮮な海産物が並ぶ。


目の前で調理してくれる帆立ラーメン。


ホテルをチェックアウトしたあとは、元湯であの素晴らしい湯をもう一度楽しみ、帰途に着いた。

東京へ戻ってからも、青森で見た景色や祭りの音、温泉の心地よさは鮮明に残っている。

そして気づけば、次は青森のどこを旅しようかと考えている。

「奥入瀬渓流ホテル by 星野リゾート」で森と渓流の静けさに身を置くのもいい。「界 津軽」に滞在しながら、また違う青森の文化に触れる旅もしてみたい。

一度の旅が、次の青森への旅につながっていく。

「青森屋 by 星野リゾート」は、青森を楽しむ目的地であると同時に、もっとこの土地を知りたくなる入口でもあった。



青森屋 by 星野リゾート

青森県三沢市字古間木山56




Profile

谷口優子 Yuko Taniguchi

女性誌で長年、インテリアや旅、ライフスタイルをテーマに企画・編集・執筆を行う。人やものづくりの背景にある物語を伝えることを大切にしている。

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